AIC税理士法人

税務調査でお困りの中小企業社長様に、顧問契約なしで、税務調査対応いたします。
下記のことでお困りの場合に、税務調査に強いベテラン税理士が対応いたします。
まずはお気軽にお問合せください。

(受付時間:平日9時~17時 東京:050-7101-1932、大阪:050-7101-1931


対応地域 原則として東京及び京阪神地区
(その他の地域でも対応可能な場合があります。但し、別途交通費及び日当必要)
料金 お問い合わせいただけましたら、別途お見積りさせていただきます。(原則 1日当たり10万円(消費税別)より)

※次の場合には対応できません

「税務調査」とはよく聞く言葉ですが、税務調査をきちんと理解している経営者は、ほとんどいないのが実態です。なにせ、会社や社長にとって税務調査は、オリンピックよりも頻度が低いイベントなのですから、当然といえば当然でしょう。
(会社によっては、3年に1回という場合もありますが、全体平均では、4年に1回のオリンピックよりも長いスパンです。)
税務調査とは何かというと、税務署の国税調査官という公務員が会社に来て、帳簿類などを確認して、税金の計算に誤りがないかどうかを確認することです。
もう少し詳細に説明すると、調査官が帳簿などを見てよくわからないことがあると質問してきますので、それに回答しなければなりません。

「この接待交際費って、誰と行ったんですか?」
「これは4月の売上になっていますが、3月の売上じゃないんですか?」
「奥さんが役員になってますが、奥さんは具体的にどんな仕事をしているのですか?」
「この取引に関する契約書を見せてください」

あくまでも例示ですが、このような質問が典型的なものです。
帳簿の内容を確認するだけなら税理士が回答できるのですが、社長や会社の人でないとわからないことも多いため、実際には調査官の質問には、社長に回答してもらうことになるのです。

税務調査で大変なのは、時間的拘束かもしれません。短いときは1日で終わる税務調査もあるのですが、2日間程度行われるのが普通です。午前10時から始まり、正午あたりから昼休憩をはさんで、夕方4ー5時まで行われるのが一般的です。2日間というのも、あくまでも税務調査であまり問題が出なかったときであって、問題が出れば出るほど、その日数はどんどん伸びていくことになります。

社長としては、税務調査の予定が入ってしまうと、税務調査に対応する間は、仕事の予定を入れることができなくなるため、ちょっと大変です。ただし税務調査といっても、ずっと質問されているわけではないので、電話に対応するなど、最低限の仕事はしていただいて構いません。

なお税務調査は、1~2週間前に税務署から連絡があって予定を調整して決めることが通常です。しかし、事前の連絡なく税務調査が行われる、つまりある日突然いきなり、調査官が会社にやってくることもあります。これは「無予告調査」と呼ばれるものです。

社長同士で飲みに行くと、たまに税務調査で「痛い目にあった」話で盛り上がることもあります。「真面目に会社をやっているだけなのに、多額の追徴を持って行かれた!」こんな経験談を聞くことが、税務調査のイメージが悪くなる理由の1つですね。痛い目にあったのは、その会社が税金を少なくするなどの悪いことをしていたり、税務調査での対応が悪かったりすることがほとんどです。正しい対応方法さえ知っておけば、ほとんどの税務調査で嫌な思いをすることはないのです。

 社長に「税務調査ってどんなもんだと思ってます?」と聞くと、古くは映画「マルサの女」のインパクトが強いのか、最近ではテレビ朝日で放送された米倉涼子主演のドラマ「ナサケの女」のイメージがあるのか、散々下調べをした挙句、突然やってきては、警察のガサ入れのようなことをされることを想像している方も多いようです。

 よくある大きな勘違いは、「税務調査=マルサ」ではありません。税務調査は「国税調査官」が行っているもので、「マルサ=国税査察官」が行っているものとはまったく違うのです。もちろん、調査官も査察官(マルサ)も国税庁の職員ですよ。しかし、やっていることはまったく違います。

 マルサ(査察官)が行うのは「強制調査」と呼ばれるものです。マルサは裁判所の令状を持ってきますので、会社にそのまま上がり込むは、書類などを押収されるは、それは大変なことになります。しかし、これは脱税をしている悪い会社の話です。普通は、マルサが入ったりはしません。

 会社が受ける普通の税務調査は、「任意調査」と呼ばれていて、当然裁判所の令状などありません。あくまでも税務署が「調査したいです」と言って、社長が「はい、いいですよ」と了解するから実施できるのが税務調査なのです。「ガサ入れ」のような行為はないので、心配することはありません。

 また税務調査が怖い理由に、調査官が怖いと思っている場合もあるようです。税務調査は、脱税など悪いことをした会社や社長を取り調べるために行われるものではなく、あくまでも税務署に提出された申告内容が正しいかどうかを確認するためのものですから、調査官を怖れる必要はありません。

 調査官の態度が大きかったり、言葉遣いが悪いような場合があるようですが、社会人としての対応として疑義を感じるのであれば、調査官本人に指摘して、是正を促しても構いません。悪いことをしていないのであれば、税務調査といえど、普通のビジネスシーンと同じようにふるまえばいいのです。

経営者にとって税務調査は嬉しいイベントではないですよね。だからちょっと考えてみると、「そもそも税務調査を断ることができるのではないか?」と思ってしまいます。

 さて結論から書くと、税務調査は断ることができません。残念かもしれませんがこれが事実です。断ることができるのであれば、誰でも断っているかもしれませんが・・・

 断ることができないのは、法律の解釈からになります。法律など面倒かもしれませんが、少しだけお付き合いください。

法人税法第153条(当該職員の質問検査権)
「国税庁の当該職員又は法人の納税地の所轄税務署長しくは所轄国税局の当該職員は、法人税に関する調査について必要があるときは、法人に質問し、又はその帳簿書類その他の物件を検査することができる。」

 実は法律上、「税務調査」という言葉はありません。この法律によって、税務署の調査官には「質問検査権」という職権があると認められています。これが一般的にいう(税務)調査なのです。

 さらに法律は続きます。

法人税法第162条(罰則)
  「次の各号のいずれかに該当する者は、1年以下の懲役又は50万円以下の罰金に処する。
2.第153条又は第154条第1項若しくは第2項(当該職員の質問検査権)の規定による当該職員の質問に対して答弁せず若しくは偽りの答弁をし、又はこれらの規定による検査を拒み、妨げ若しくは忌避した者
3.前号の検査に関し偽りの記載又は記録をした帳簿書類を提示した者」

 つまり、調査官が質問したことに対して、何も答えなかったり、嘘を答えたような場合、また税務調査で偽物の帳簿なんかを提示した場合は、「1年以下の懲役又は50万円以下の罰金」という罰則が定められているのです。
 ですから法律上、税務調査は断れないとなっていて、黙秘権もありません。

 ただし、税務調査は「今すぐ」受けなければならない、というものではありません。仕事で多忙な時期や、個人的な事情がある場合、時期はずらしてもらえますので、その際は率直に調査官に伝えましょう。

他の会社の話などを聞くと、まったく税務調査に入られたことがない会社もあれば、3年ほどのペースで税務調査に入られている会社があります。

実は、税務調査がどのくらいの頻度で来るのかは、会社によってまったく違うのです。そうはいっても、ある程度は税務調査の頻度にも基準があるので、概略ではありますが説明しておきましょう。

  • ・売上が100億円以上あるような大きな会社:3~4年に1度のペースで税務調査
  • ・売上や利益が大幅に伸びている会社:4~5年に1度のペースで税務調査
  • ・売上はあまりなくてもパチンコ業や廃棄物処理業など、不正が多いと税務署に管理されている業種の会社:4~5年に1度のペースで税務調査
  • ・過去に重加算税を課されたことのある会社:3~4年に1度のペースで税務調査

 これらはあくまでも基準ですが、これらに該当しないのであれば、ある程度売上があっても、税務調査は6~7年くらいに1回の割合になるでしょう。
かなり業歴が長い社長に聞いてみても、人生で多くて4~5回くらい税務調査を受けたくらいが最大回数ではないでしょうか。

またよく聞かれるもので、「優良申告法人であれば税務調査に入られない、もしくは税務調査があってもあっさり終わるのでは?」という質問があります。

優良申告法人とは、税務署が5年に一度の税務調査で、適正な申告と納税がされ、かつ経営内容が優良で問題ないとして表敬する法人のことです。優良申告法人に認定されると、地元の税務署長が来社し、表彰状を渡されるとともに、写真撮影まで行われます。

確かに以前から税務署では、優良申告法人であれば税務調査をあまり行わない、もしくは税務調査に入っても、短い日程で終わるという慣習があります。

しかし、最近では優良申告法人の制度も見直されています。というのも、過去に優良申告法人であるとされた会社が、そもそも税務調査に入られにくいというのはおかしい(つまり、その後に悪いことをする可能性は排除できない)こと、また優良申告法人はかなりの納税をしている会社なのですが、長引く不景気で、優良申告法人自体が極端に減っていることも事実です。

法人会などによっては、「御社もぜひ優良申告法人で!」などと営業されると聞きますが、そのために多くの納税することは、あまりおすすめできることではありません。税務調査を嫌がる以前に、まず経営のことを本気で考えなければならないのが経営者ですから。

 税務調査が精神的にもっともキツいのは、社長が犯罪者扱いされることかもしれません。調査官から、あたかも何か悪いことをやっているかのように尋問されることもあるでしょう。

「この取引先からの売上は他にないんですか?」
「接待交際費の中に個人的な飲み食いが入ってるんじゃないですか?」
「社長が個人的に、リベートなんか受け取っていないですよね?」

さて、税務調査を規定する法律にはこのように明記されています。

法人税法第156条
「前三条の規定による質問又は検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」

つまり法律上、税務調査は「犯罪捜査」ではないのだから、会社や社長があたかも脱税しているかのように扱ってはならないと、きちんと法律に載っているのです。

しかし実際のところ、調査官は脱税している人を何人も見てきているわけですし、言ってしまえば追徴税額を課すことが仕事になっていますから、税務調査ではどうしても社長が悪いことをしているかのような態度で臨んできます。

ここで社長として大事なことは、税務調査では絶対に「感情的にならないこと」。感情的になってしまったら負けだと思ってください。
調査官の立場になって考えてみてください。彼らも人間です。機械ではありません。ですから調査官にも感情があります。「この社長はひどく感情的だな」と思われてしまうと、調査官も感情的になるのが世の常人の常です。

社長が感情的になってしまい、「何であなたは俺を犯罪者扱いするんだ!」「俺が本当だと言っているのにまだ疑うのか!」となってしまうと、本来は早く終わった税務調査ですら、調査官が感情的になって長引いてしまい、それが結果で最終的に追徴税額が増えてしまうこともあるのです。これでは元も子もありません。

追徴税額を少なくするためにも、社長が感情的になってはいけません。また、あまりに調査官の態度がひどい場合は、上記の法律を持ち出して反論すべきです。

税務調査を受けた社長はおわかりでしょうが、税務調査とは暇なものです。調査官がパラパラと帳簿をめくっている間、社長は何もすることがないのですから。たまに飛んでくる質問に回答するだけで、会計処理については税理士が回答するわけですから、1日中税務調査を受けて、社長がしゃべったのはほんの二言三言というのはよくある話です。

そもそも顧問税理士がいるんだから、社長が税務調査に同席する必要がないのでは?と思う方も多いと思いますが、実はこれが正解です。顧問税理士がいれば、社長自身が税務調査に同席する必要性は法的にないのです。

そうはいっても、調査官は税務調査で社長の同席を求めてきますし、税理士も最初から最後まで社長抜きで税務調査というのは困るというのも事実です。

これはなぜかというと、事業の概況を聞くということが必要だからです。税務調査では調査官もいきなり帳簿をめくり始めるわけではありません。税務調査を始めるにあたって調査官は、その会社がどうやって成り立ってきたか、業界の動向、今後の方向性などを社長から聞き、それら概況を知ったうえで細かい帳簿等のチェックに入るわけです。

事業の概況というのは、税理士が答えられるものでもなく、やはりこのときに社長が必要になります。逆にいえば、事業概況さえ答えてしまい、帳簿のチェックに移行すれば社長の同席は不要で、本職である税理士に任せてしまえばいいのです。

社長が同席していないと、税理士も答えられないポイントが出るかもしれませんが、それは後日社長が税理士から聞いて回答すれば何ら問題ありません。

社長が税務調査から外れるには、下記のような方法がいいでしょう。

10時:調査官が来社(税務調査の開始)
その際に「11時から仕事の都合で外出しなければなりませんので、私(社長)に対する質問があれば、今のうちにまとめてしていただけますか?」と調査官に言います。

10~11時:事業の概況などを回答する(できるだけ談笑)

11時前後:外出して、あとは税理士に任せる

ちなみに、予定がないのに「予定がある」というのはウソ(虚偽答弁)になりますから、実際に仕事の予定を入れなければなりません。

 税務調査は通常、朝10時から始まります。そこでまず調査官は、世間話から切りだしてきます。「最近めっきり寒くなりましたね」「先日の地震の影響は大丈夫でしたか?」などなど。
社長からすると、「前置きはどうでもいいから、早く税務調査を始めてくれよ!忙しいんだから」と思うでしょうが、調査官からすると、世間話も大事な税務調査のテクニックの1つなのです。

税務調査を喜ぶ社長はいません。ですから特に税務調査初日は、社長が調査官を警戒しているのが当然です。調査官も警戒されたままでは、社長が質問に対してまともに答えてくれるわけがありません。だからこそ、世間話をすることで、社長に心を開いてもらうことから始めるのが調査官のテクニックなのです。

社長も話すことに慣れてくると、調査官はどんどん話し込んできます。

調査官:「社長はゴルフが好きなんですか?」
社長:「そうですね、まあたまに行きますかね。付き合いもありますし。」
調査官:「どれくらいのスコアでまわられるんですか?」
社長:「うーん、最近はダメでやっと100切れるくらいかな~」
調査官:「月に何回くらいゴルフに行かれますか?」
社長:「月に2、3回かな」
調査官:「プライベートでは誰と行ったりするんですか?」
社長:「プライベートでは、仲の良い社長連中と行ってるよ」
調査官:「プライベートで行っているゴルフも会社の経費になってるんじゃないですか?」
社長:「・・・」

これは非常に簡単な例ですが、社長が話し過ぎたことで、プライベートの経費を否認されてしまう典型例です。

では、「調査官の質問に対して無視をすればいいのでは?」と思われるかもしれませんが、これはダメです。税務調査は「受忍義務」があるので、質問には答えなければなりません。しかし、話し過ぎもダメなのです。

税務調査を受けるうえで大事なのは、「嘘は絶対に言うな。」これが鉄則なのです。

「税務調査は受けなければならないことはわかる、しかし弊社は店なので、調査官が座ったりする場所がないのですが、どう対応すればいいですか?」
確かに、税務調査となったら社長が悩むのは、税務調査を受ける場所の問題です。会議室が1つしかなければ、そこを占拠されてしまうと、お客様・取引先が来社したときに対応できません。特に店舗を経営されていると、そもそも会議室なんて無いわけで、どこで税務調査を受ければいいのか途方にくれるときもあります。

さて、税務調査を受ける場所は、法律上明確に定めがありません。ですから法律上は、どこで税務調査を受けてもいいことになります。しかし、税務調査とは会社の帳簿類を見てもらうことが必要になりますから、帳簿類を保管している場所=税務調査を受ける場所になります。

しかし、会社で帳簿類を保管しているのだが、会社で税務調査を受けることが実質的にできないような場合には、帳簿類を税理士事務所に移送して、そちらで税務調査を受ける、また帳簿類を持参して税務署で税務調査を受けるということが考えられます。「会社で税務調査を受けることが実質的にできないような場合」とは、具体的に下記のような場合が考えられます。

  • 会社が店舗で、税務調査を受けるような場所がない
  • お客様の出入りが多く、税務調査を見られたくない
  • 帳簿類の保管は税理士に任せている

実際にこのようなケースがありました。マッサージ店を営む会社に税務調査が入りました。当初はマッサージの診療スペース(つまりマッサージ台の上)に調査官と座り、いろんな質問に答えていましたが、カーテンで仕切っているだけなので、お客様に内容を聞かれてしまいます。また調査官の方も、電卓で計算しづらいと思ったので、必要な帳簿類を車で税理士事務所に運んで、そこで税務調査を受けることにした、という例です。

調査官も当然ながら、上記のような事情があるのであれば、会社内で絶対に税務調査をしたい、という特別な事情がない限り、場所の変更は受入れてくれるものです。

事情があるなら、申し訳ないと思わずに、きちんと調査官に伝えれば場所の変更などは問題ないのです。

「税務署の調査官は、ホント無理やりでも追徴税額を持っていこうとしますよね」税務調査を何度か経験したことがある社長なら、みんな思っていることでしょう。
ここで気になるのは、調査官のノルマです。「車のディーラー営業マンに販売台数のノルマがあるように、調査官にも追徴税額のノルマがあるのかな?」と疑いたくなる気持ちはわかります。

さて、実際のところ、調査官に追徴税額のノルマはありません。「今年は○百万円」の追徴税額を課してこい!」とは言われていないのです。
しかし、調査官にノルマがないわけではありません。「追徴税額にはノルマがない」のであって、ノルマは存在します。それは、「税務調査の件数にノルマ」があるのです。
調査官は1年間を通じて税務調査を行っていますが、その間に、30件程度のノルマを課せられています。このノルマを達成できないと、まさに税務署内で問題になるのです。

1年間は52週ありますが、休みなどを除くと、働いている週は実質35~40週程度ですから、1人あたりの調査官で、1週間に1件の税務調査を実施しているイメージでしょうか。

なぜ調査官に、税務調査の件数ノルマがあるかといえば、税務調査の実地調査率を上げるためです。

「最近の税務行政の動向」
https://www.nta.go.jp/kohyo/katsudou/shingi-kenkyu/shingikai/110303/shiryo/pdf/04.pdf

の6ページにもある通り、国税は実調率(実地調査率)を公表しています。実調率とは、税務調査をすべき全体件数のうち、1年間でどれだけの税務調査を実際に行ったのか、率で算出したものです。
この資料にもある通り、法人の実調率は4.6%となっています。つまり、現在は税務調査をあまり行えていないため、平均すると20~25年に1回しか税務調査に来ないというわけです。(もちろん平均の話です)
これでは課税の公平性を守れません。なぜなら、税務調査にあまり入らないことがわかれば、真面目に申告・納税する人の数は減るからです。
そのためにも、調査官にそれぞれ税務調査件数のノルマを与えることで、実調率を上げようとしているのです。

 「調査官には追徴税額のノルマがないのであれば、あんなに無理やり追徴税額を課そうとしなくてもいいのに・・・」社長がこう思うのも当然でしょう。

さて、これにはノルマ以外のカラクリがあるのです。税務調査で調査官は件数のノルマを負っているのですが実は、「評価」は別に行われています。
調査官も公務員というサラリーマン。他の国家組織と違うのは、完全な年功序列で昇進昇格するのではない、ということです。
調査官は、今まで担当した税務調査でどれだけの増差所得(税務調査前と後で、利益の金額がどれだけ変わったのか)で評価されており、その金額が大きければ大きいほど昇進昇格が早くなり、出世できるのです。
実際に国税組織では、明らかに年下の上司(統括官といいます)が、年上の部下(調査官)を使っているのを目にすることができます。出世の早い調査官は、今まで多額の増差所得を発見し、課税してきたのです。

調査官の評価はもう1つあります。それは「不正発見割合」です。
簡単にいうと、悪いことをしている=脱税している会社を見つけた割合なのですが、具体的には、重加算税を課した割合です。税務調査を10件行い、3件重加算税を課したとすると、30%の不正発見割合ということになります。この不正発見割合が高い調査官も評価され、早く出世することができます。

ここで注意が必要なのですが、出世に燃える調査官ほど、無理やりでも誤りを発見したり、特に不正を発見しようとします。しかし、実際には誤りがなくても「これは経費にできませんね」「これは売上の計上時期がズレていますね」と平気で言ってくることもあります。本当に誤りがあるのであれば、当然修正すべきですが、誤りもないのに無理やり指摘してくることに対しては、断固として反論すべきです。

また昔から、「税務調査ではお土産が必要」と言われます。お土産とは、税務調査で何も誤りがない場合に、調査官としては税務署に帰りづらくなってしまうので、わざとこちらから誤りの箇所を調査官に教えてあげる、また本当は間違っていないのに、修正申告をしてあげる行為を指しています。

確かに調査官は、誤りを見つけて評価されているわけですから、確かに何も誤りを発見できなければ、気まずい思いをしているのでしょう。しかし、これでは何のための税務調査かわかりません。調査官の評価など気にする必要はありません。お土産を渡すことなど考える必要などないのです。

 税務調査の現場で調査官は何を見ているのでしょうか。「税務調査なんだから、調査官は当然、帳簿や領収書などを見てるんでしょ?」これは半分正解ですが、半分足りません。
「税務調査は、調査であって単なるチェックではない」ここが重要です。
上場企業では、税務調査以外に、監査法人等による会計監査が実施されています。また、上場企業ではなくても、不正をチェックするなどのために監査役を置いている企業も数多くあります。多くの監査の場面で、帳簿などをチェックして、間違いを発見し正すことが行われています。

例えば、本当は接待交際費に計上すべき経費を会議費に計上していたとします。社長からすればどっちでも同じようなものかもしれませんが、税金の計算上は違います。同じ経費でも、接待交際費であれば全額損金にすることはできないのです。つまり、会議費を接待交際費にするだけで税金が増えます。帳簿上会議費に計上されていたものが、本当は接待交際費だという誤りを見つけるのは、帳簿というあるものをチェックし、間違いを見つけるのですから、あくまでも帳簿のチェックの範疇です。

一方、「税務調査」は、そのようなチェックのみにとどまらず、もっと広い目で調査します。「ないものを見つけること」も調査なのです。
例えば、現金で受け取った売上が計上されていない、取引先から受け取ったリベートが社長個人の口座に入金されている。このようなものは、当初から帳簿に計上されていないのですから、いくら帳簿をチェックしても誤りや抜け・漏れを発見することができません。
税務調査とは、ただ帳簿をめくって誤りを見つけるだけではなく、それに加えて、帳簿にない本当の取引まで見つけようとする行為なのです。怖いですね・・・

話を戻して、税務調査で調査官は何を見ているのでしょうか。帳簿や領収書など、事業の取引がわかる資料は当然ながら、調査官が注意していることは2つあります。

①社長の発言
調査官は社長の発言を誘ってきます。これは、社長の発言から、帳簿にはないお金の動きや、取引の事実を発見するためです。そのためにも、調査官に対する発言は注意すべきです。

②会社に置いている物・置いていない物
年末に取引先から送られてくるカレンダーを使っている会社も多いはずです。そのカレンダーには取引先名が入っているのですが、その社名が帳簿に載っていなかったらどうでしょうか、怪しいですよね。会社の資産になっている高級車。会社の駐車場になかったら、・・・誰でもおかしいと思いますよね。つまり、調査官は会社に置いている物を見て、帳簿などにないのか、もしくは帳簿には載っているけれど、会社にはない物を見ているのです。

 実は、調査官が「社長の発言」や「会社の物」を重要視する理由があります。それは、1回の税務調査ですべてをチェックするのは不可能だということです。

税務調査というのは、変なお金の流れや取引が出てこない限り、2~3日で終わります。あまり規模が大きくない会社であれば、1日で終わることも珍しくありません。
これは当然で、1社1社税務調査で数週間も時間をかけていたら、他の会社の税務調査ができなくなるからです。調査官も御社の税務調査だけをしていればいいのではなく、ノルマを負っています。また、1人の調査官で1件の税務調査だけをしているのではなく、他の会社の税務調査も同時に進めているものです。

だからこそ、調査官側の事情からしても、「効率よく」税務調査を実施する必要があるというわけです。本来は調査官もすべての取引をチェックしたいのでしょうが、時間の関係もあって実際にはできない以上、調査官は帳簿にない取引を、発言や物で探そうとするのです。 調査官によって税務調査の進め方は違いますが、帳簿をひたすらめくって、都度取引の内容を質問してくる調査官は、社長からすると嫌な感じがするとは思いますが、こんな調査官はデキない調査官なのです。デキる調査官は、「当たりをつける」ことが非常にうまいです。全体を理解したうえで、細かいことをチェックせず、漏れや抜けがありそうなところばかりチェックしてくるのです。デキる調査官にかかると、会社が気付いていない従業員の不正まで発見されることもあり、驚くばかりです。

また、場合によっては「資料せん」を持ってくる調査官もいます。「資料せん」とは、税務署が内部で集めている資料で、取引先などから収集した取引金額などの情報が記載されたものです。調査官が「資料せん」を持っていると、チェックする取引を当初から的を絞ってくるので、対応は楽なのですが、誤りが見つけられることも多くあります。
ただ調査官が「資料せん」を持っているかといって、絶対に不正が見つけられるかといえばそうではありません。「資料せん」自体が間違っていることもあります。調査官が自信満々に来たとしても、おびえる必要はありません。

税務調査では、金額の大きい取引、主要な取引先との取引、現金が絡む取引に目を付けられやすいので、普段から税務調査の対象になりそうなポイントは、すぐにでも説明できるようにしておくことが、税務調査の正しい対応方法です。

税務調査は何年分さかのぼって見られるのでしょうか?税務調査で何年分遡るのか、実はかなり曖昧な基準しかありません。
まず通常、法人と個人事業主ともに、3年分を遡って税務調査が行われます。ですから、税務調査の事前連絡が入り、帳簿や書類を準備しておくのは3年で問題ありません。

しかし、たまに5年分遡って見るというイレギュラーな税務調査もあります。これは法律違反ではありませんから、「税務調査は通常3年だけですよね?」と言って断ることができません。ですから、「何も悪いことをしていなければ、最大でも5年分の税務調査が行われる」と覚えておけば十分です。

ここで問題になるのが、税務調査は最大7年間遡ることができるということです。簡単にいうと、「会社が悪いことをしていたら、7年分遡ることができる」というものです。法律ではこのように記載されています。

国税通則法第70条
5 偽りその他不正の行為によりその全部若しくは一部の税額を免れ、若しくはその全部若しくは一部の税額の還付を受けた国税についての更正決定等又は偽りその他不正の行為により当該課税期間において生じた純損失等の金額が過大にあるものとする納税申告書を提出していた場合における当該申告書に記載された当該純損失等の金額についての更正は、前各項の規定にかかわらず、次の各号に掲げる更正決定等の区分に応じ、当該各号に定める期限又は日から7年を経過する日まですることができる。

つまり、「偽りその他不正の行為」=「悪いことをして税金をごまかしていた」ら、税務調査は最大7年間遡れることが、法律上明記されているわけです。裏を返せば、税務調査で8年以上前に遡られることはあり得ないともいえます。
では、「偽りその他不正の行為」とは具体的にどのような行為を指すのでしょうか。列挙していけばキリがないのですが、下記に例示だけしておきます。
(例)
・領収書や請求書等の改竄(かいざん)・捏造など
・わざと(故意に)売上や経費の時期をズラすこと
・架空の人件費など

税務調査で7年遡られると、それだけで追徴税額が多額になってしまいます。間違っても「偽りその他不正の行為」は絶対にしないことが大事です。

 税務署で税務調査先に選んだからといって、調査官が何も準備せずに税務調査に臨むわけではありません。多くの会社がある中で、わざわざ税務調査先に選んだわけですから、税務調査で調べたい事項があるのです。

税務調査の前にまず調査官がやっていることは、申告書など提出した資料を細かくチェックすることです。やはり、提出した書類・資料が大事だというわけです。

これだけで調査官の事前準備は終わりません。税務調査の前に、内観調査と外観調査が行われるケースもあります。

内観調査とは内偵調査とも呼ばれるもので、特に現金商売の事業者に行われます。飲食店であれば、調査官は事前にご飯を食べに来ていると考えた方がいいでしょう。
内観調査では主に、客数や客単価、従業員数、出前があるかどうかの確認の他に、現金の動きをチェックされます。会計時に、レジを打っているのかどうか。レジを商品などを打たずに現金箱のように扱っている店舗も数多くありますが、これは要注意です。調査官からすると、「これでどうやって正しく売上を把握しているんだ?」と事前に疑われる可能性が大です。
また、調査官が内観調査で支払った現金が、税務調査のときにどこにあるのかを調べられることもあります。調査官は目印をつけておいた1万円札で支払いをし、税務調査のときにその1万円札を調べるのです。現金商売では、レジから売上のお金を抜く社長も多くいるので、そこまでチェックしているのです。店舗を経営している会社は、いつ調査官が内観調査に来ても疑われないように、普段から現金の取り扱いをきちんとしていることが重要です。

また、外観調査が事前に行われている可能性もあります。外観調査とはその言葉通り、外から見られているのです。店舗を営んでいると、外から客数を数えていたりします。また、社長の自宅をチェックされることもあります。これは社長の生活状況をつかむことが目的ですが、会社の資産になっている車が自宅に置かれていないかどうかも見られているのです。
最後に、最近では調査官が会社のホームページは当然ながら、社長の個人ブログをチェックしたり、ツイッターやフェイスブックなどのソーシャルメディアも見られている可能性が高いです。税務調査の連絡が入ったときだけではなく、税務署に疑われるようなネット上の書きこみは控えるべきでしょう。

今回は「税務特有のリスク」についてお伝えします。税務特有のリスクは、税務調査で突然顕在化するので注意する必要があります。税金というのは、基本的な構造上、「担税力」があるから税金がかかってくるようになっています。つまり、「儲かった=税金を払う」という構図です。しかし、税務にはややこしい規定がたくさんあって、この基本的な構図が崩れる場合があります。その典型例の1つが「交際費」です。

交際費というと、取引先と飲み食いをした場合に接待交際費になって、中小企業の場合は、年間600万円までは一定の範囲で経費(損金)になることは知っている方も多いはず。(600万円以内でも10%は経費なりません)しかし、税務上の交際費なる規定はかなり範囲が広いのです。相手方の歓心(関心)をかうような行為は、多くの場合、交際費とされてしまいます。

例えば、自社の名前を入れて取引先にゴルフボールを配るような場合、これは広告宣伝費になりますが、相手方の名前を入れてあげて、ゴルフボールを作れば、これは交際費とされてしまうのです。

これは、相手方の名前を入れたゴルフボールを作ることで相手方の歓心(関心)をかおうとしているもので飲みにつれて行くのと同じだという考えです。社長としては当然経費になるだろうと思ってしていたことが、税務調査でいきなり、「これは交際費なので全額は経費(損金)にはなりませんね」と言われ、追徴税額が発生するのですから、リスクでしかありません。

税務上の交際費を書き始めるとキリがありませんので、支出が交際費なるのかその他の経費になるのかは、国税庁のホームページで確認することができます。ぜひ参考にしてください。

交際費等と広告宣伝費との区分 https://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/5260.htm

交際費等と福利厚生費との区分 https://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/5261.htm

交際費等と寄附金との区分 https://www.nta.go.jp/taxanswer/hojin/5262.htm

  前トピックから引続き、税務調査で顕在化しやすい、税務特有のリスクについて書いていきたいと思います。交際費以外にも、社長(会社)が何も意識していなくても経費(損金)にならないというものがあります。それは「寄付金」です。

  寄付金と聞くと、「うちは会社で寄付なんかしてないよ」と思われるでしょうが、税務上の「寄付金」は違います。簡単に説明すると、法人税法上の寄付金とは、

・タダであげる
・本当の金額よりも安くしてあげる

ような行為全般を指しています。

怖ろしいことに、税務上の「寄付金」と認定されると、経費(損金)にならないどころか、タダでもらった・安く受取った相手方にも税金がかかります。実務上はよく親子・関連会社で起るので、わかりやすいケースで説明しましょう。

親会社が買ったときの値段で1億円の土地を持っています。今は土地の時価が下がっていて、土地の時価が7000万円とします。子会社に7000万円(時価)で売れば、3000万円の売却損を計上することができて、節税になるのですが、ここまでは問題ありません。(少なくとも「寄付金」の問題にはなりません。要件により、グループ法人税制が適用されます。)ここで社長が色気を出して、「もっと土地を安く売ればもっと節税できる!」と思い、3000万円で子会社に売却したとしましょう。時価は7000万円ですから、3000万円で売ると4000万円分が寄付金と言われるのです。誰に対する寄付か?もちろん子会社に対してです。
このような場合、4000万円のうちほとんどは経費(損金)にできないばかりか、子会社に受贈益として同じく4000万円分が課税されます。

このようなケースではなくても、親会社と子会社が同じスペースに入っていて、親会社の名義で事務所を借りているとしましょう。子会社は親会社に使用している面積分の家賃を支払うべきなのですが、支払っていないと、親会社の子会社に対する「寄付金」として、受取っていない家賃分について税金がかかるのです。ただ家賃を取っていないだけで余計な税金がかかるのですから怖ろしいことです。実際には儲かっていなくても税金が課される、そのほとんどは税務調査で顕在化するのですから、いかに税務調査が怖いものかおわかりいただけると思います。
交際費と合わせて、寄付金と調査官に言われないよう、普段から税務処理には気をつけなければならないのです。

 さて、今回は「税務調査が変わる」についてお伝えします。すでに決定していることですが、法律が大きく改正になることで、来年(平成25年)から行われる税務調査がかなり変わってくるのです。今年税務調査を受ける可能性もありますので、改正前(平成24年以前)と改正後(平成25年以降)を対比させて説明しましょう。

税務調査に関する法律において、改正前(平成24年)はこのような規定があります。
(国税調査官は)「帳簿書類その他の物件を検査することができる。」
つまり、税務調査において、調査官は帳簿書類などを検査(見てチェック)することができるよ、という規定です。
これが改正後(平成25年以降)はこのように変わります。
(国税調査官は)「帳簿書類その他の物件を検査し、又は当該物件の提示若しくは提出を求めることができる。」
微妙に法律の文言が変わっただけなのですが、法律の文言をいちいち変えるぐらいですから、そこには意味があります。

改正前(平成24年)の法律を厳格に解釈すると、「調査官は、帳簿書類などをチェックできるだけ」なのですが、改正後(平成25年以降)は「ただチェックするだけではなく、必要があるのであれば、コピーなどの写しをもらっていくことまでできる」ようになったということです。

以前の税務調査から、調査官からコピーが必要だと言われれば、会社の方でコピーを撮ってあげて、それを調査官に渡していたのですが、実はこれは法律上の解釈では成り立たない行為でした。つまり、調査官から「コピーを欲しい」と言われても、「いやいや、その場で見てチェックしていけばいいではないですか!?」と言えば、調査官も「仕方ないですね」と言わざるを得なかったわけです(実際には感じが悪いので、そのような対応をしないわけですが)。

これが法律の改正によって、会社などその場でのチェックだけではなく、調査官も堂々と「持って帰りますので、提示だけではなく提出してください」と言えるようになったわけです。これはもちろん、コピーだけの話ではなく、必要なのであれば帳簿そのものや、請求書・領収書などの原本・現物も含めたものです。

社長の知らないところで法律は改正され、それによって税務調査のやり方も変わっているわけです。この改正によって、調査官の権限レベルが上がったといえるでしょう。

前トピックから引続き、「税務調査が変わる」ことについてお伝えします。すでに説明したように、来年からは調査官が帳簿や書類などを持って帰ったり、コピーを撮ったりすることが正式にできるようになります。これは以前から実務上は、よく行われていたのですが、法律上許されるようになるわけです。

これに加えて、「留置き」の制度が新たにできることになりました。難しい言葉で、かつ新たにできた法律ですが、意味合いは簡単です。調査官が必要だと判断するなら、みなさんが調査官に提出した帳簿や書類などを。ずっと預かることができるというものです。

すでに税務調査を受けて、調査官に書類などを貸したことがある社長であればおわかりの方もいるかもしれませんが、帳簿書類を貸し出すときには、「預り証」なる書面を調査官が発行します。「これとこれを税務署で預かりますよ」と約した書面です。

しかし、この貸し出すという行為は、あくまでも改正前(平成24年まで)は会社側の「任意」なわけです。調査官が「貸してほしい」と言っても、嫌だといえば断れます。また貸したとしても、経理業務などで必要な場合は、「今すぐ返却してほしい」といえば、調査官も任意で借りている以上、その要望を断ることができないのです。

今年も含めて今まではこのように、会社の意思で断れたりもした帳簿書類の貸し出しが、改正後(平成25年以降)は法律で明記される以上、会社の「任意」ではなく、調査官の「権限として」できるようになるのですから、前項と同じく、調査官の権限レベルが上がった、もしくは新たな権限が追加されたと言っていいでしょう。

ちなみに改正後(平成25年以降)で、いったんは貸し出すにしても、「業務に支障をきたすので、返却してください」と調査官に依頼すれば返却してくれるのか、もしくは、いつになったら返却されるのかについては法律上明記されていることではありません。正確に説明しておくと、法律にはこう書かれています。

「留め置いた物件につき留め置く必要がなくなったときは、遅滞なく、これを返還しなければならない」

これでは、調査官(税務署)の判断で、返却するのかしないのかを決めることができることになり、貸した会社が圧倒的に不利になります。

どちらにしても貸し出さなければならないのであれば、面倒ですが、コピーをとってから渡すようにした方が無難だと言えます。

またこの制度ができても、調査官は何らかの書面(「預り証」ではなく「留置書」のような名称になるのかもしれません)を発行することは変わらないものと思います。

 税務調査に入られやすい会社には、入られやすくなる理由や、ある程度パターンがあるのですが、実は税務調査自体の目的ではないのに、税務調査に入られることがあります。わかりにくいポイントなので、しっかり説明したいと思います。

税務署は常日頃から、脱税者(社)を捕まえるために、あらゆる面から情報収集を行っています。例えば、税務調査を行うと、その取引先や取引金額を情報として残しています。また、税務調査に入らなくても、雑誌・チラシの広告から情報収集したり、街を歩いていた際に見かけた駐車場の台数から、持ち主が確定申告を適正にしているのかまでチェックしているのです。

つまり、税務署にとっては、常日頃から収集している情報が大事であり、その情報を取るためならかなりの努力をするというわけです。

そこで行われるのが、「情報収集のための税務調査」です。ある会社に税務調査に行くのですが、その会社が適正な申告・納税をしているのかをほとんどチェックもせずに、その取引先や顧客データを収集しているのです。
経営者からすると、本当に迷惑な税務調査なのですが、実際にはこのような税務調査もあるのです。

具体的には、

・保険の代理店のところに税務調査に入って、顧客リストを情報収集
→ 節税目的や資産家を洗い出しています

・証券会社やFX会社
→ 副収入を得ているのに確定申告していない人を洗い出しています

・不動産仲介会社
→ 不動産を売却・購入したのに確定申告していない人を洗い出しています

これらは例示であって、他にも情報収集のための税務調査は行われているのです。もちろん税務署は、「情報収集のための税務調査なので、御社には関係ないですよ」とは言ってくれませんので、税務調査が始まってみないと、「これはまさか情報収集のためだけなの?」ということはわかりません。

時間が取られて迷惑な反面、自社に追徴税額がなどがあまり発生しない分、少し喜んでもいい種類の税務調査なのかもしれません。

 税務調査に入られる理由はいくつかあるのですが、前のトピックで書いた以外にも、「広域調査」と呼ばれるものがあります。

広域調査とは、いくつかの税務署の管轄にまたがって、同時に行われる税務調査のことです。具体的には、親・子会社や関連会社がいくつかあり、その登記場所がバラバラの場合に、それらの会社に一斉に税務署(調査官)が入り、税務調査を実施するケースです。

もちろん、関連会社がいくつかあるからといって、絶対に広域調査が行われるというものではありません。しかし、広域調査が行われる場合は、そのほとんどが無予告調査(事前に通知のない税務調査)になります。というのも、事前に連絡をすると、関連会社同士で数字を合わせたり、税務署には見せられない資料を破棄したりする可能性が高くなるからなのです。
広域調査はかなりやっかいで、複数会社、しかも実質的には同じ経営者である法人に、同時に税務調査をされるわけですから、対応するだけで大変なことになります。

また、似たような税務調査の種類に「同時調査」があります。同時調査とは、2つ以上の税目の税務調査を同時並行して行われる調査のことを指します。
税務署は、法人税=法人課税部門、所得税=個人課税部門、相続税=資産課税部門など、税目(税金の種類)ごとに部署が分かれていて、通常は1つの部署だけで税務調査を行うものなのですが、何か理由がある際には、部署が合同で税務調査を実施することもあります。これを同時調査と呼ぶわけです。

また、会社に対する税務調査であっても、法人税のみならず、消費税や源泉所得税、印紙税なども同時に調査の対象となり、このような場合も同時調査と呼ばれることがありますが、これは一般的な税務調査だと思っていただいて結構です。

法人税と所得税の部署が合同で行う税務調査の場合、過去に個人事業主であった方が、法人を設立(いわゆる法人成り)していたという経歴があり、法人税も所得税も同時に調査しなければならないケースが多いようです。
また、経営者が亡くなられた場合に、相続税には会社の株式の評価などが絡む場合は、相続税の調査のみならず、法人税の調査も同時に行われる場合もあります。

税務調査にもいろいろな種類のものがあり、一筋縄でいかないということだけでも知っていただければと思います。

 税金の法律や、税務署の調査官が「一番嫌いなこと」をご存知でしょうか?「脱税!」もちろん正解なのですが、脱税していない真面目な方でも、調査官に嫌われることがあります。それは・・・「所得調整」です。

所得とは、税金上でいう御社の「利益」です。税金は仕組み上、利益を調整するようなことを許さないようにしていますし、調査官も税務調査において、利益調整を許さないというスタンスです。

具体的にどういうことか考えてみましょう。

今期絶好調で売上が伸び、それにともなって利益も伸びました。今期の利益は計算してみるとなんと、1億円もでそうです。こんなに利益がでると、税金も凄い金額になります。何とかして会社の利益を減らして、会社にかかる税金を減らしながら、でもムダ遣いをしたくない。そう考えるのが経営者のサガでしょう。

ではどうするのか?ここで、社長自身にボーナス(賞与)を出せればいいのですが、役員に対する賞与は、法人税の経費(損金)になりません。では、社長の給料をいきなり5000万円にすればどうでしょうか。できれば、今期の頭まで遡って、社長の給料を上げることができれば最高です。でも、これも認められていないのです。

税金の仕組み上、役員の報酬(給料)は、期が始まってから3ヶ月以内に決めて、その決めた報酬金額を変動することは許されない税法の取り扱いになっています。社長は社長なので、自分の給料を自分で決めることができます。でも本当は、自分で決めることはできていないのです。もう少し正確に言うと、オーナー社長であれば、社長が自分の給与を自由に決めることは、会社法上はできますが、税法上は認められないため、税務上の計算では増加部分を経費として認めないということになります。

なぜこんな仕組みなのでしょうか?冒頭に話を戻すと、それは利益を調整するようなことを許していないからです。

利益がでそうだ → 役員の報酬を増額して利益を調整

こんなことができるのであれば、実質的に会社が支払う税金を操作できることになります。
税務調査でも同じです。調査官は期末あたりの経費・支出に目を光らせています。「利益を無理やり減らそうとしていないか?」「来期に売上を繰り延べていないか?」「来期の経費を今期に無理やり計上していないか?」計画性のない利益操作をすると、税務調査で大変なことになりかねないのです。

 前項に引続き、社長の報酬と退職金について説明したいと思います。
まだ引退を考えていない社長であっても、いつかは引退する、もしくは、何かあった場合に引退せざるを得ないリスクは、経営上いつも考慮しておかなければなりません。そこで、引退するときに税務上もっともリスクなのは、退職金の金額設定です。
退職金は毎月受け取る給料(役員報酬)と違い、かなり高額になりますし、退職金で老後の生活等を考えるべきものですから、税務上の課税は優遇されています。つまり、給料よりも、退職金の方が税金は安いのです。

ここで問題になるのは、退職金の金額設定。高い金額を支給してしまうと、税務調査で「この退職金は高いです!」と言われてしまいます。役員報酬と同じで退職金すらも、自分で決めることができないのか・・・

さてここでまず、退職金の金額設定に関して知っていただきたいことがあります。役員の退職金は、通常このように計算されます。

適正な退職金=①在任年数×②功績倍率×③最終報酬月額

この式を解説すると、「①在任年数」は社長を何年したかです。長ければ長いほど、会社に貢献したということで、退職金の額は増えることになります。もちろんこの期間は操作できるものではありません。

「②功績倍率」とは、あまり聞きなれない言葉ですが、社長でいえばだいたい「3」前後が目安になります。そして最後の「③最終報酬月額」。これはその名の通り、引退するときの最後の月額報酬です。

例えば、社長を20年間してきて、功績倍率を3、最終月額報酬が100万円であれば、退職金は6000万円ぐらいまで出しても、税務調査では文句を言われないだろうというわけです。

ここで真面目な社長ほど、退職金で驚くことがあります。真面目な社長は、会社のためにと、自分の報酬を抑えている場合が多いのです。もちろん会社のことを考えれば、それはベストなのかもしれませんが、そのまま引退してしまうと、最終報酬月額が低いので、退職金がそれほど支給できない結果になりかねません。これは、会社の経営が厳しくなったときに、役員報酬を無理やり下げる場合も同じリスクがあるのです。

いきなり利益がでても、赤字に陥っても、役員報酬を変動させるのは、常にリスクがあるということは知っておいてほしい事実なのです。

消費税率を上げる法案が国会を通りました。これで近い将来、消費税率が上がることは確実になったわけです。
ただでさえ納付するのが厳しい消費税ですが、税率が上がればさらに大変なことになりそうです。消費税率が倍の10%になれば、単純に計算しても、倍の消費税を納めなければならなくなるわけです。

消費税が上がることで、会社の経営の何が変わるかといえば、設備投資です。もちろん、消費税率が上がることで請求書等の変更を求められたり、税率の移行期間は経理処理が面倒になったりと、表面的に変わるものは多くありますが、経営にもっともインパクトするのは設備投資なのです。

単純に考えてみましょう。1000万円の機械を買うのに、消費税が倍の10%になれば、なんと100万円もの消費税になり、50万円も多く消費税を支払わなければなりません。
設備投資は毎年のように行うものではなく、タイミングを見計らって行うものですが、ほんの1年ズレるだけで消費税が大きく変わるのですから注意です。

勘違いされている経営者の方も多いのですが、消費税は土地にはかかりません。土地はいつ売っても買っても消費税は影響しないのです。
その一方で建物には消費税がかかります。建物を購入する場合は、消費税が上がる前に購入しなければ、消費税だけ数百万円の差が出ることになりそうです。

税務調査でポイントになるのは、土地と建物を一括して購入している場合です。土地と建物をまとめて5000万円で購入したとしましょう。買うときは、土地と建物をまとめて5000万円ということしか考えていないと思いますが、消費税を考えると、5000万円のうちいくらが土地で、いくらが建物なのかを分ける必要があるのです。
例えば、5000万円のうち2000万円が建物部分ということになれば、消費税は5%で100万円となりますが、4000万円が建物部分ということになれば、消費税が200万円になってしまいます。
土地と建物を按分する計算は、いくつか方法があったり、不動産鑑定士に依頼することもあり得るのですが、実務上は適当に金額を決めやすいので、税務調査では調査官に「建物がこの金額なのはなぜですか?」と聞かれます。契約書に明記するなど、当初から金額設定には根拠ある資料をそろえておきましょう。

 消費税率が上がることになれば、税務調査でもっとも問題になるのは、外注費か給与かの判定でしょう。
外注費として支払っていれば、消費税も支払っていることになりますので消費税は少なくなるのですが、給与ということであれば、給与には消費税は含まれませんから、消費税を差し引いて計算することができないのです。

よくある外注費か給与かの問題は、建築会社や美容室などの専門職を雇っている会社に発生します。相手が職人であれば、会社としては雇っているのではなく、外注先として仕事を振っているという感覚があると思います。しかし、税務署としてはその外注先に対する扱いが社員と同じようなものであれば、外注費ではなく給与と指摘してくるわけです。
毎月110万円の外注費を支払っている会社があるとしましょう。この外注費が給与ということになれば、110万円には消費税が含まれないことになるので、年間に10万円×12ヶ月=120万円もの追徴税額が発生することになります。これは1年間ですから、税務調査で3年~5年遡られると、これだけですごい金額になってしまうわけです。

外注費か給与かという問題は、明確な基準があるわけではありません。いろんな要素を加味しながら決まるもので、だからこそ税務調査の際には注意が必要となります。

少し専門的になりますが、外注費か給与かを判定するには下記のような項目をチェックされることになりますので、今のうちから税務調査の材料を揃えておきましょう。

(1)会社への属性
(2)業務の裁量権
(3)勤務時間
(4)支払形態
・月払い・完成従量等 
・定期昇給
・退職金等 
・残業手当
・賞与等
・タイムカード
・出勤簿等 
・請求書等の有無
・支払日が給与と同じか、外注先と同じか
・手形・小切手を想定しているか
(5)福利厚生
・社会保険の加入
・厚生施設の利用の可否
  ・忘年会の出席等
(6)その他
・原材料の支給 
・作業用具の支給状況 
・経費の負担状況

  税務署とは面白い組織で、調査官は3年程度の頻度で税務署が変わり、人事異動になります。つまり、毎年約3分の1の調査官が入れ替るわけです。

これは、調査官と納税者(一般国民)との癒着を防止するための施策だと言われています。ずっと同じ税務署にいれば、何度も同じ社長や税理士を担当することになり、おかしなことになりかねないとの配慮なのです。

どの税務署に、どの調査官が配属になったのかは、公開情報になっていますので、冊子等を購入すれば調べることができます。しかし、このような冊子(一般的には「配属便覧」と呼ばれています)は、印刷等の関係で10月中旬にならないと手に入らないのが通例となっています。もちろん、個々の調査官を調べても、誰がどんな性格なのかまではわからないですし、そこまで事前に知る必要はないのですが、知っておきたいのは、調査官の経歴です。

税務署という組織も、全員が全員、税務調査を担当している調査官というわけではなく、組織である以上、総務もいれば、人事担当もいます。
長年総務の仕事をしており、久しぶりに現場に戻ってきた調査官ということであれば、正直あまり税法も覚えておらず、勘所が悪かったりするため、税務調査がスムーズに進まないケースもあります。

また、税務署の上位にある国税局で、大規模な税務調査ばかり担当していた調査官が、税務署に来たとなれば、ある程度厳しい税務調査を想定しておかなければなりませんから、社長と税理士で事前の打合せを綿密にする必要があるかもしれません。
このように、人事異動というのは税務調査の対応が変わる時期でもあるのです。

3分の1もの調査官が異動するわけですから、税務署も今の時期はバタバタしています。そして7月から、8月以降の税務調査に向けて、調査官は税務調査先の「選定作業」に入るわけです。

秋は税務調査がもっとも実施される時期です。早ければ7月最終週くらいに税務調査の予約連絡が入ります。いったんお盆などを挟み、9月から11月くらいにかけて、一気に税務調査が行われるのです。嬉しい時期ではないかもしれませんが、税務調査はいずれ入るわけですから、慎重かつ誠実に対応したいものです。

 「青色申告」という制度をご存知でしょうか?以前は税務署も青色申告を普及させるためにポスターを作ったりして、広報活動を活発にしていたのですが、今は青色申告が当り前になっていますね。

ほとんどの会社や個人事業主が青色申告のため、自分の会社が青色申告なのかどうか意識しない経営者の方も多いのが実態です。そもそも、青色申告とはどんな制度なのでしょうか。

青色申告の特典は、実はいろいろあるのですが、一番大きな特典は「欠損金の繰越」です。これは、赤字になると、翌期以降の黒字と相殺できるという制度です。

例えば、去年が100万円の赤字で、今年が300万円の黒字だったとします。青色申告をしていなければ、去年の法人税は0円、今年は黒字なので、300万円の利益に法人税がかかるのですが、青色申告をしていれば、去年の法人税は同じく0円なのですが、今年は300万円-100万円=200万円にだけ法人税がかかるのです。

青色申告には意識していない特典がある一方で、さらに知られていないのが、青色申告には要件があるのです。それは、法定の帳簿書類を作成し、それを7年間保存することです。

「そんなこと言われてなくても、帳簿などはきちんと保管していますよ!」という会社も多い中、たまに問題になるのが、請求書や領収書を誤って捨ててしまうケースがあります。 顧問税理士から戻ってきた請求者や領収書を、いつまで保存するのか知らず、5~6年経つと捨ててしまう方もいるのです。もちろん捨ててしまったこと自体に悪意はないのですが・・・

こういうケースで税務調査に入られると大変なことになります。青色申告の要件は、「法定の帳簿書類を作成し、それを7年間保存すること」ですから、一部でも捨ててしまって無いということになれば、青色申告を取り消されることになりかねないのです。

青色申告を取り消されてしまったら大変です。特に、赤字がある場合ですね。先ほど説明したとおり、青色申告だからこそ、赤字の繰越ができるのであって、過去に遡って青色申告を取り消されてしまったら、過去に赤字を通算して計算したものも、合わせて否認されることになります。こうなったらもう地獄です。

詳しくは国税庁のホームページにもありますが、いくらジャマでも7年間は絶対に書類などを保存しておかないと、税務調査で大変なことになるのです。

毎年7月以降、秋にかけては税務調査の時期です。

さて、税務調査の対応で知っておいて欲しいことは、調査官の指摘に対して納得していないのであれば、絶対に修正申告書に捺印・サインして提出してはいけないことです。当り前のようなことですが、これがなかなか実行されないのも事実なのです。

税務調査で誤りが見つかり、会社として「確かに間違っているよな」と思うのであれば、修正申告を提出すればいいのです。実際に間違っているのですが、間違いは間違いで認めればいいのです。

しかし、調査官の指摘に対して、「これは間違っているのではない!」「それは見解の相違だろう」と思うのであれば、徹底してその主張をすることです。

税務調査の結末は、3つのパターンがあります。

①誤りなどがなかった場合:申告是認(しんこくぜにん)
②誤りがあって納得している場合:修正申告の提出
③調査官に誤りだと指摘されたが納得できない場合:(税務署による)更正処分

①は問題がないとして、②と③に支払税額として何の違いもありません。③は「更正処分」という言葉なので、何か悪いことをして「処分される」ようなイメージを持たれるかもしれませんが、更正処分を受けたからといって、税金の額が増えたり、その後税務調査に何度も入られたりするようなことは一切ありません。

税務調査というと、予定調和的に修正申告を提出するものだと思っている経営者の方もいるのですが、決してそうではないということです。

修正申告を提出した場合には、納税者の側から後で異議申し立てをすることはできませんが、更正処分を受けた場合には、納税者の側から税務署長に対して異議申し立て、国税不服審判所への審査請求、裁判所への訴えをすることが可能になります。

しかし、現実的な話をすると、我々税理士がいるにもかかわらず、税務調査で修正申告を提出しない態度を示すと、高圧的な態度になる調査官もいますし、タチの悪い調査官になると、我々税理士がいないことを狙って、会社に直接連絡してきて、「今から少しでいいので時間をください」と要請してくるケースもあります。

納得していないのであれば、調査官の口車にのって修正申告を提出してしまえば、いかに税理士といえども、どうにもできない状況になるのです。絶対にこの対応は覚えておいてほしいものです。

前回に続いて、税務調査における修正申告のお話しです。ちょっと怖い話ですが、たまにあるので、お伝えてしておかなければなりません。

税務調査で調査官の否認指摘に対して納得していない
→納得していないので修正申告を出さないと伝える
→修正申告しないと大変なことになると「脅し」てくる調査官もいます

具体的にどんな脅しかというと、ほとんどは3つのパターンに分かれます。

①「修正申告しないと税金が増えますよ!」
これは明らかなウソです。前回でも書いているように、修正申告であっても更正になったとしても、税金の額が増えたりすることはありません。

②「細かいことまで調べることになるので税務調査が長引きますよ!」
実際に、修正申告を提出しない態度を示すだけで、延々と税務調査をしようとする調査官がいます。税務調査が長引くことで「もういいよ・・・」と経営者があきらめるのを待っているのです。

③「取引先のところに反面調査に行きますよ!」
取引先に対して反面調査を行うことで、会社の信用を失墜させようとする行為での脅しです。反面調査は脅しの手段ではないため、反論・抗議することが可能です。

そもそも、なぜこのような「脅し」の言葉を吐いてまで調査官が修正申告を「強要」してくるかというと、調査官にとって更正処分するのは非常に面倒だからなのです。

税務調査の結末が修正申告ということになれば、会社(経営者)として納得しているのですから、その後面倒なことにはなりません。また、修正申告は会社が自主的に行うものですので、提出された修正申告書を税務署で処理すればそれで終わりです。

しかし、更正処分ということなると、税務署から会社に対する処分ですから、処分するための根拠・証拠をそろえなければなりません。また、更正処分は税務署長名で行われる法律行為ですから、税務署長の決裁まで必要とされており、調査官としては手続きだけでも非常に面倒なのです。もちろん、修正申告でも更正処分でも、調査官のノルマや評価はまったく同じです。

修正申告してほしいのは、実は調査官なのです。だからこそ強要までしてくるというわけです。修正事項に納得できない場合には、変な脅しには絶対に屈しないでください。

税務調査で指摘される税務処理上の誤りは、会社によって多種多様なのですが、共通する問題点があります。それは「重加算税」です。

重加算税とは、通称「ジューカ」と呼ばれており、払うべき税金が35%も上乗せされ、さらに延滞税(税金の利息部分)が高くなるという、まさにダブルパンチです。

国税庁の最新の発表によると、税務調査で重加算税が課される割合は「20.6%」にもなります。つまり、5件の税務調査が行われると、1件以上に重加算税が課されているのというのが現実なのです。本当に恐ろしいことです。

もちろん本当に「脱税」など悪いことをしていれば、重加算税を課せられて当然なのですが、税務調査の現場では、悪いことをしている認識がなくても、「重加算税だ」と調査官から指摘されるケースも多々あるので、細心の注意が必要です。

では、重加算税を課される要件というのは、どういったものなのでしょうか。ここでは、経営者として最低限知っておくべきことだけを書いておきましょう。

重加算税が課される要件は、法律で明記されています。簡単にいうと、「隠ぺいまたは仮装」したことです。逆にいうと、「隠ぺいまたは仮装」をしていなければ、重加算税は課されないということです。

まず、「隠ぺいまたは仮装」という言葉から連想される(悪い)行為を想像してみてください。「隠ぺいまたは仮装」という言葉は、考えてみると「故意=わざと」という意味合いを含んでいます。「故意ではない隠ぺい」も「わざとじゃない仮装」もありえないのです。

「隠ぺいまたは仮装」とは漠然とした言葉ですが、これを裁判所はこのように定義しています。

「「事実を隠ぺい」するとは、事実を隠匿しあるいは脱漏することを、「事実を仮装」するとは、所得・財産あるいは取引上の名義を装う等事実を歪曲すること」
(和歌山地裁昭52・6.23判決)

つまり、「わざと」何かを隠すことを「隠ぺい」で、「わざと」何かを書き変えたりすることを「仮装」としています。こう聞くと、確かに悪いことをした会社が、重加算税を課されるのだということが、漠然とでもおわかりいただけると思います。

前トピックから引続き、重加算税に関して、さらに詳細に説明をしていきましょう。重加算税は、税務調査でもっとも問題になりやすい項目であり、かつ法律的にはかなり深い項目でもあるのです。

重加算税の要件となる「隠ぺいまたは仮装」を具体的に例示すると、このような行為を指すことになります(あくまでも「例示」であることをお忘れなく)

(1) 隠ぺい

①二重帳簿の作成:税務署や税理士に見せる帳簿と、本当の帳簿を分けて作っていた場合
②売上除外:売上をわざと少なくしていた場合
③架空仕入:実際には存在しない仕入を帳簿上あったようにしていた場合
④架空経費:実際には存在しない経費を帳簿上あったようにしていた場合
⑤棚卸資産の除外:在庫がある会社で、決算時の棚卸を実際により少なくしていた場合
⑥雑収入の除外:会社が得る副収入をわざと申告しなかった場合

(2) 仮装

①取引上の架空名義の使用:存在しない取引先名を使っていた場合
②通謀虚偽表示:取引先と共謀して、実際には存在しない取引をあるようにみせかける、または金額を変えたような場合
③虚偽答弁:調査官の質問に対して嘘の回答をした場合

これらはあくまでも、「こんな悪いことをしていたら重加算税が課されますよ」という例示に過ぎませんが、重加算税が課される要件はおわかりいただけたのではないでしょうか。

  さて、ここで非常に重要なことは、あくまでも重加算税の要件は「隠ぺいまたは仮装」の行為をしたということです。調査官がよく「これは不正だから重加算税ですね」という指摘は間違っています。ただ「不正」をしたから重加算税になるのではなく、あくまでも上記のような「隠ぺいまたは仮装」行為をしたから重加算税になるのです。

また、よくありがちな指摘としては、単純な「誤り」を重加算税だと言われることもありますが、これも重加算税ではありません。例えば、接待交際費をクレジットカードで支払い、クレジットカードの明細書で経費処理したにもかかわらず、店からもらった領収書でも経費処理した場合、これは経費の2重計上となり、調査官は「重加算税ですね」と言ってきます。しかし、「わざと」経費の2重計上をしたのではなく、ただ単純に誤って経費処理しただけですから、重加算税にはならないのです。調査官の言い分を鵜呑みにはせず、重加算税の要件を満たしているかどうかだけで判断してください。

さて、前トピックから引続き「重加算税」を掘り下げてみたいと思います。
重加算税の要件は「隠ぺいまたは仮装」なのですが、これでもまだ、「結局のところ、どんなことをしたら重加算税が課されるのかわかりにくい」というわけで、国税庁はホームページで重加算税の要件について、詳しくガイドライン(事務運営指針といいます)を明示しています。

事務運営指針とは、56,000人以上もいる国税職員が、税務調査などでバラバラの対応をしてはならないので、国税庁が制定・明示・開示しているもので、調査官全員が「守らなければならないルール」のことです。この事務運営指針には、このように明示されています。

帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しない場合

「売上げ等の収入の計上を繰り延べている場合において、その売上げ等の収入が翌事業年度の収益に計上されていることが確認されたとき。」

難しく書いていますが簡単にいうと、「今期の売上に計上すべきものが、翌期の売上に計上されていた場合は、重加算税を課さない」ということです。
一般的にいう「期ズレ」と呼ばれるもので、売上の計上時期がズレていただけであれば、35%の重加算税は課されないと、はっきり明示されているのです。にもかかわらず、税務調査の現場では期ズレでも重加算税と言われることがあるので要注意です。


また、同じ事務運営指針には、このようにも明示されています。

帳簿書類の隠匿、虚偽記載等に該当しない場合

確定した決算の基礎となった帳簿に、交際費等又は寄附金のように損金算入について制限のある費用を単に他の費用科目に計上している場合。

ただ単純に、勘定科目を間違って税金の計算に誤りがあったような場合も、重加算税は課されないのですが、調査官には同じように重加算税と言われるケースが多いのです。これは明らかに調査官の誤りと言えます。

 さて、ここまで理解していただければ、税務調査において重加算税で困ることはないでしょう。すでに説明したとおり、重加算税のガイドラインが「事務運営指針」として、国税庁のホームページで開示されているにもかかわらず、実態として調査官が重加算税と言ってくる理由は2つあります。


①言い返されなければOK

調査官は、重加算税を課した割合=不正発見割合で評価されています。調査官が自分の評価を上げたければ、どんな否認指摘にでもとりあえず「重加算税ですね」と言っておいて、反論されなければ重加算税を課してしまうのが効率的なのです。
実際に何か悪いことをしているわけでもないのに、税務調査で「重加算税です!」と強く言われると、「そうなのかな・・・」と思ってしまうものです。
すでに書いているとおり、重加算税には「隠ぺいまたは仮装」という要件があるわけですから、この要件に該当しないと考えられる場合には、きちんと調査官に対して反論すべきです。


②事務運営指針を知らない

調査官の全員が、重加算税について上記の事務運営指針を熟知しているわけではありません。知らない調査官だからこそ、調査官自身の曖昧な基準で「不正=重加算税」と言ってくるわけです。こういう現実があるからこそ、我々税理士が税務調査に立ち会えば、税務調査で「これは重加算税ですね」と言われた際には、事務運営指針を提示して、「この取引のどこがこの事務運営指針に該当するのですか?」と反論できるわけです。

また重加算税でもっとも気をつけなければならないことは、重加算税を課されると今後税務調査に入られやすくなるということです。税務署からすれば、過去に「隠ぺいまたは仮装をした会社」と判断するわけですから、当然の結果でしょう。

こういった意味でも、追徴税額のリスクだけではなく、本当は重加算税ではないのに、重加算税を課されてしまうということは、会社にとっていいことなど一つもないということを肝に銘じておく必要があります。

 先日、衝撃的なニュースが流れました。税務調査に関連する事件としては珍しく、新聞記事でも大きく取り上げられていましたので、すでにご存じの方も多いかと思います。神戸にある「川崎汽船」という造船会社に税務調査が入り、その中で極めて不当な税務調査が行われたということで、争いになっていた事件です。

「大阪国税局が威圧調査 不当性認め所得隠し指摘取り消し」
https://www.asahi.com/kansai/news/OSK201209070058.html


各記事の一部を引用すると、下記のような内容です。

【国税局の担当職員が川崎汽船や造船会社の従業員らを調べた際、

「(従業員らと合意した事実関係を記す)確認書を作る時、威圧的に言われ、国税局の主張に沿う内容の確認書に押印した」
「『そのまま書いて』と、国税職員が作った文案のまま確認書に署名するよう誘導された」
「『この回答は違う』『この会社は法人の体をなしていない』と怒鳴られた」などと訴えた。」
「「国税側の認識に沿うような確認書を作成し、一部事実に反する内容の回答を引き出した」
「隣室の会議に支障があるような怒声を発した」

などと指摘。処分を取り消し、6億円が同社に還付された。】

この事件はまだ詳細まで公開されていませんが、主旨としては「法律の解釈論での争い」ではなく、「税務調査の手続き」に関するものです。つまり、税務調査というものの範囲を超えて、「威圧」された税務調査ということで、「不当」と判断されたのです。

ちなみに、税務調査に関連するこのような事件で、法人(納税者)側が勝つというのは、かなり珍しいものです。

こういう記事を読むと、税務調査というものが怖くなるのですが、ここまでの税務調査はほとんど無いとはいえ、やはり税務調査をしている調査官も人間ですから、性格などによっては、「威圧的な」調査官がいるのもまた現実。

税務調査とはあくまでも、法人(納税者)の理解と協力を得て行われる「任意」の行為であって、税務調査においては、税務署(調査官)と法人の立場は対等でなければなりません。この点を勘違いしている調査官がいれば、こちらから「言動には気を付けてください!」と主張しても問題ないのです。

前回紹介した「川崎汽船事件」のように、「不当な税務調査」がないとは言い切れないのが事実なのですが、今回は事件までとは言わないまでも、「これは明らかに不当だろう」という例を紹介したいと思います。

税務調査において、調査官に「これは間違っていますね」と指摘されたケースで、その内容や根拠に納得いかない場合があります。このような際には、当初からお互い冷静に、意見の食い違いを埋めていくべきなのですが、この協議が平行線のまま進むことも少なくありません。つまり、こちら(納税者)としては、調査官の言い分に納得できないケースです。

このようなケースでは、最終的に調査官も落としどころを見つけることができず、下記のような「威圧」をかけてくることもあります。

①「税務調査が長引きますよ」

経営者が嫌がる典型的な言葉です。ただでさえ得することがない税務調査で、さらに時間とられると思うと、誰でも心が折れそうになります。税務調査を不当に長引かせようとすることは、当然税務調査の不当性があります。

②「反面調査に行きますよ」

反面調査とは、取引先や銀行に対して税務調査を行い金額などを確かめる、税務調査の一環です。今までは反面調査に行かなかったのに・・・反面調査をかけて取引先・銀行との信用・信頼関係を失墜させることを前面に出して、調査官が威圧してくることもあります。

③「修正申告しないのであれば、税額が増えますよ」

最終的に、「修正申告であればこの金額ですが、更正となると全部チェックしなければならないので、税額は増えます」と言ってくる調査官もいます。

すべての調査官がそうではありませんが、もし調査官の威圧的な言動があった場合は、冷静に「今言った言葉は、私を威圧しているのですか?」と確認する必要があります。

「威圧と誘導」に屈しないためには、経営者としては、下記のポイントを知っておかなければなりません。

・税務調査はあくまでも任意であること

・質問検査権の範囲

・更正と修正申告に税額等の違いは、法的にないこと

脅しに屈しない理論武装も必要だということです。

 税務調査にはいろいろな種類のものがありますが、よくあるのが今回取り上げる「反面調査」です。

そもそも、「反面調査」とは何でしょうか。反面調査は、税務調査に入った会社・個人事業主の取引先・銀行等との取引実態や金額を正確に把握するために行われるものです。

反面調査は、法律でも認められています。しかしその一方で、反面調査を行われてしまっては、取引先や銀行などとの関係性を壊される可能性があるのも事実でしょう。では、なぜ反面調査が法律で認められているのでしょうか。このような2つのケースを考えてみましょう。


=ケース1=

税務署がある会社に税務調査に入りました。しかし、その会社は脱税しているため、バレないように請求書や領収書などを偽造しています。調査官は数枚の請求書・領収書が偽造・ねつ造されているのを見つけました。しかし、どの書類がおかしいのか、まだまだある膨大な資料を全部チェックすることは実質不可能に近い状態です。

→このようなケースでは、提示した書類がもう信じられる状況ではないのですから、調査官としては取引先などに反面調査をしなければ、正確な金額がわからないというわけです。

ではこのようなケースはどうでしょうか。
=ケース2=

税務署がある会社に税務調査に入りました。しかし、その会社は以前、ビルの1階に入っている飲食店で火事があり、消防車に消火活動の中で、請求書や領収書などがすべて水浸しになりました。まったく悪意がなく、完全に被害者なのですが、結果的には税務調査で提示しなければならない請求書や領収書などがないわけです。

→このようなケースでは、調査官としては何も確認しようがないわけですから、仕方なく反面調査を行わなければなりません。

では、反面調査は「どんな場合でも」認められるのでしょうか。例えば、元請けと下請けのような取引関係であれば、反面調査によって元請けからの信用がなくなれば、以後仕事がもらえなくなり、本当にそれだけで倒産することもあり得るでしょう。取引先の担当者は、税務署が来たというだけ、「何か悪いことをやっているんじゃないか?」と疑い始めるわけです。

反面調査が法律上認められているといっても、無制限に認められているわけではありません。反面調査を無制限に認めてしまうと、「反面調査に行きますよ!行かれたくないなら・・・」なんてことを言う調査官がいたとしても、反論することができないわけですから、これではおかしいわけです。

まず知っていただきことは、反面調査を定める法律には、この文言が入っています。

「調査について必要があるときは」

そうなのです。反面調査をする「必要があれば」実施してもらえばいいのですが、「必要がなければ」反面調査はできないのです。

では、「反面調査が必要なとき」とはどんなときなのでしょうか。それは前回の2つのケースで書いたように、請求書や領収書の信頼性がないときや、保存できていないような場合のはずなのです。 つまり、請求書や領収書をきちんと調査官に見せて、金額も日付も確実にわかる場合は、そもそも反面調査に行く「必要がない」のです。

当然といえば当然なのかもしれませんが、税務署が反面調査をおこなうことで、納税者からのクレームが多数あることも事実です。そのため、税務署(国税局)の内部には、反面調査に関する3つの「規則」があります。


【税務署内の規則】

①昭和36年7月14日国税庁長官通達

「いたずらに調査の便宜のみとらわれ、納税者の事務に必要以上の支障を与えることのないよう配慮し、ことに反面調査の実施に当っては、十分にその理解を得るよう努める」

②昭和51年4月1日税務運営方針の一部抜粋「調査方法等の改善」

「税務調査は、その公益的必要性と納税者の私的利益の保護との衡量において社会通念上相当と認められる範囲内で、納税者の理解と協力を得て行うものであることに照らし、一般の調査においては、事前通知の励行に努め、また、現況調査は必要最小限にとどめ、反面調査は客観的にみてやむを得ないと認められる場合に限って行うこととする。」

③平成12年7月個人課税事務提要、平成13年7月法人課税事務提要

「取引先等の反面調査を実施しなければ適正な課税標準を把握することができないと認められる場合に実施する」

これら3つの規則があるにもかかわらず、守らない調査官がいれば、「私は反面調査に規則があるのを知っていますよ。守ってください。」と主張することができるのです。ぜひ頭の隅にでも残しておいて欲しい情報です。

税務調査は通常、1~2週間前に連絡があり、「○〇日に税務調査に行きたいのですが、ご都合はどうですか?」と事前に調整があるものです。

しかし、事前に連絡がある税務調査ばかりではありません。何の連絡もなく、いきなり調査官がやってくることもあるのです。これは「無予告調査」と呼ばれています。

そもそも、無予告調査が「法律として」認められているのかというと、これは認められています。正確にお伝えすると、法律には「税務調査は事前の連絡をする」などの明確な規定がないため、事前の連絡がない税務調査も認められていると、実務上は解釈されているのです。

では、無予告調査はどの程度行われているのでしょうか。国税庁のホームページによると、税務調査を行ったうち「法人の約1割、個人事業主の約2割が無予告調査」と公表されています。かなり高い確率で無予告調査が行われていることがわかります。


事前の連絡がない税務調査がなぜ行われるのか、と考えてみると、飲食店などの現金商売のように、事前に税務調査の連絡をしてしまうと、売上金額が正しく申告されているかどうか、税務署が把握しにくいと考えているからです。

しかし一方で、現金を取り扱っていない会社・個人事業主にも、無予告調査が行われているのが実態です。税務署が持っている情報から、「何かあやしい」「事前の連絡をすると税務調査がうまくいかない可能性が高い」と判断されると、無予告調査になるわけです。

さて、そもそも税務調査は何のためにあるのか、と考えてみると、会社や個人事業主の方が(税理士に頼んで作成して)税務署に提出した申告書に、計算誤りがないかどうかを調べるために行われるものです。利益を不当に低くしたり、違法に税金を免れようとしてないかを、税務署の調査官が確認するわけです。この主旨から、このような法律の規定があります。

「質問又は検査の権限は、犯罪捜査のために認められたものと解してはならない。」

このように「税務調査は犯罪捜査とは違いますよ」と明記されているのです。つまり、税務調査を受ける人たちは、「何か悪いことをしているんだろう」とういう前提にたってはならない、とされているのです。

この法律からもわかるとおり、税務調査というのはあくまでも「任意」であって「強制」ではありませんから、会社・個人事業主の許可なく、調査官が勝手にキャビネットを開けたり、パソコンを触るのは法律に違反しているというわけです。

無予告調査は法律的にも認められているのですから、「税務署(調査官)が突然会社に来た=その場で税務調査を受けなければならない」と考えがちなのですが、実はそうではありません。
前提を書いておくと、「税務調査は断ることができません」。税務署から事前に連絡があろうとなかろうと、これは同じです。税務調査を断ることができるのであれば、誰も税務調査で困らないわけです。
しかし、税務署(調査官)が提示してきた日時に、絶対に税務調査を受けなければならないかというと、これは違います。他に予定があるなど、税務調査を受けることができない場合は、他の日時にしてもらうことは単なる調整であって、許されるのです。
話が少しまわりくどくなりましたが、「税務調査をします」と突然調査官が来ても、「他の日時にしてください」というのは「拒否」ではないため、可能なのです。

ここで事前の連絡がなく、いきなり調査官が来た場合の対応方法を書いておきます。

【無予告調査の正しい対応方法】

①事業所内に入れない「税理士に連絡しますのでそのままで少々お待ち下さい」
⇒常識ある方なら、来客があれば社内に通すと思います。来客が税務署の人間ということであればなおさらです。しかし、あえて会社内に入れない方が、事前にトラブルを防ぐことができます。

②今日は予定がある旨を伝える「今日は今から別の予定が入って無理なのです」
⇒社長としても今日1日何も予定がない、ということは少ないでしょうし、顧問税理士としてもすぐに対応できるとは限りません。今すぐ税務調査を受ける必要はないのですから、予定がある旨を伝えることが得策です。

③次の調査予定を決める「来週であれば〇〇日が大丈夫なのですが」
⇒繰り返しになりますが、あくまでも税務調査は拒否することはできません。しかし、その場で受けなければならない、というわけでもありません。税務調査を嫌がっているのではなく、ただ日程を変えて欲しい、という主旨を強調しましょう。


無予告調査をそのまま受けてしまうことで、トラブルになるケースが多くあります。トラブルにならないよう、無予告調査をその場で受けてしまわないよう、この3つの対応方法を徹底していただきたいものです。

 税務調査は通常、1~2週間前に連絡があり、「○〇日に税務調査に行きたいのですが、ご都合はどうですか?」と事前に調整があるものです(無予告調査と呼ばれる調査があることは先日書かせていただいた通りです)。

さて、この事前連絡なのですが、税務署内のルールが変わりました。
これは地域や事情によって違うので一概には言えないのですが、今までは

税務署から税理士に連絡 → 会社と日程調整

だったものが、今後は、会社及び税理士の双方に連絡となりました。

実はこのルールに関して、税理士としては非常に不満です。なぜなら、本来は会社に税理士がついている以上、税務署からの連絡はすべて、先に税理士にしてもらいたいからです。

会社からすれば、税務署から連絡があっても対応に困るはずです。「そんなこと言われても・・・税理士がいるんだからそっちに連絡してくれよ」と思うのも当然です。だからこそ、税務調査の事前連絡も、税理士としては先に連絡を受けたいのですが、実態は違うというわけです。

税務調査の事前連絡が先に会社にいっても、会社側が対応しなければならないかというとそうではありません。税務署から連絡があった際にはこう答えてください。

『税金に関わる全てのことは顧問税理士に任せているので、そちらに連絡してください』

会社側としてこのように税務署に伝えると、税務署は顧問税理士に連絡しなければならない、というルールになっています。逆にいえば、このように伝えなければ、あたかも税理士がいないかのように取り扱われるケースも考えられるので注意が必要です。

税務署に上記のように伝えるのは、簡単なことだと思いますので、ぜひ社内で周知徹底してください。

今回はそれと合わせて、税務調査途中の対応についての注意です。

税務調査が始まった段階では、当然税理士が立会うわけですが、1~2日で終わらない税務調査も多くあります。帳簿や請求書を見せても、その場ですべてが解決するわけではありませんから、調査官が税務署内で検討する場合や、こちらが資料を追加で提出しなければならない場合などは、「後日また会って検討しましょう」となるわけです。

しかしここで、税理士抜きで経営者に会って事情を聞こうとする調査官もいるのです。税理士がいると、経営者は本当のことを言わないと思っているのでしょう。調査官は疑うことが仕事だとはいえ、タチが悪い行動でもあります。

「税理士先生はお忙しいようですから、社長と我々だけで協議しませんか?」

「近くまで寄ったのですが、今から時間とれますか?」

「税理士先生がいなければ本当のことを話してくれますよね?」

調査官がなぜこのような行動をとるのかというと、税法(税金の仕組み)のことがあまりわからない経営者と話して、税務調査を税務署有利に進めたい、と考えているからなのです。
このような調査官の誘いに乗ったばっかりに、不利な発言をしてしまうリスクばかりか、不利なことを書いた書面にサインをさせられてしまうケースもあります。このような書面にサインをしてしまえば、サインした書面を証拠に、悪いことをやったという意識がまったくなくても、いつの間にか多くの追徴税額を課されることもあるのです。

このような状況に陥らないようにするには、税務調査の途中で調査官から直接連絡があっても、こう伝えることです。

『税金に関わる全てのことは顧問税理士に任せているので、そちらに連絡してください』

これは税務調査の事前連絡があった場合とまったく同じ言葉です。何も難しいことはありません。税務調査では税理士がいない方がいい、と調査官が考えているということは、逆に考えると、税務調査では税理士がいるだけで有利、ということでもあるのです。何があっても税理士不在の状況を作らないでください。

節税スキームを売るコンサルタントは以前から存在しますが、最近はネット上で、節税方法が出回っていたりします。また、経営者仲間の間では、「うちはこういう方法で節税したんだよね」という情報が飛び交ったもするのでしょう。

「節税」という言葉を使っている限りは、本来「合法」なのですから、税務調査で絶対に否認されないはずなのですが、実際はそんなことはありません。実は「節税スキーム」といいながら、「租税回避スキーム」だったりするわけです。

「節税」と「租税回避」の何が違うかというと、「節税」とは法律上認められた行為で、一方「租税回避」とは、部分的に見ると正しい行為を組み合わせて、全体として不自然な行為をすることで、納税額を不当に減らすことです。

わかりにくいので、いくつかの租税回避行為を例示しておきましょう。

【消費税免税スキーム】
新規設立法人は、最初の1年もしくは2年間は所費税を納める必要がありません。これを悪用して、1・2年ごとに会社を設立して消費税を免れようとするスキームです。

【法人税率引き下げスキーム】
(小規模な)法人は所得(利益)が800万円までの部分は税率が低くなります。ここに着眼して、たくさんの法人を設立して利益を分散することで、全体として法人税の金額を下げようするスキームです。

【管理会社スキーム】
個人で不動産収入が多額にある場合、親族が役員になった不動産管理会社を設立し、その会社に多額の不動産管理手数料を支払うことで、所得を分散し、全体として納税金額を減らすスキームです。

これらのスキームはすべて、単純かつ明快なのですが、税務調査で否認されないかというと、否認される可能性はあります。1つ1つ行為は法律に則っているにもかかわらずです。

上記のスキームを見ればおわかりのとおり、いくら法律的には正しいとしても、全体としてみれば明らかに税金の額を減らそうという不自然な行為なのです。このような行為を、税務署が「確かに法律に違反しているわけじゃないので認めますよ」というわけがありません。

節税と租税回避の境目は曖昧なのですが、絶対に否認されない節税スキームはないと肝に銘じておくべきでしょう。

 税務調査を受けてみると、経営者(会社)ごとに感想が違うようです。税務調査を受けるたびに多額の追徴税額を課せられ「もう税務調査にコリゴリ」と思う人もいれば、「みんなが怖がる税務調査もたいしたことないな」と思う人もいるでしょう。

ここで気を付けていただきたいのは、「1回の税務調査で何も判断できない」ということです。

以前こう言っていた経営者がいました。

「税務調査なんてたいしたことないよ。前の税務調査ではゴネたら何も言わなくなったんだから」

そしてこの会社に2回目の税務調査が入りました。担当がやり手の調査官だったらしく、あらゆる税務処理の誤りを指摘されました。追徴税額を見たら社長の顔色が変わるくらいの額だったのです。

税務署は全国に524あり、税務職員は56000人以上います。これだけの組織ですから、一概に税務調査を担当している調査官といっても、やる気や知識にバラつきがあるのが事実です。これは普通の会社でもそうでしょう。

最近急速に増えたのですが、調査官の中には「嘱託(しょくたく)」の人もいます。60歳で定年退職して、期限付きで再雇用されている調査官です。嘱託の調査官は昇進・昇格などがないため、それほどやる気があるタイプの人間ではないことがほとんどです。また逆に、若手の調査官の中でも、昇進・昇格にこだわりがあったり、やる気があったりすれば、トコトン税務調査をするタイプの人間もいるのです。

また税務調査は時期によっても、ある程度対応が変わります。税務署は7月から12月までを上期、1月から6月までを下期としていますので、たとえば、11月から始まる税務調査があるとすると、年内(上期中)に税務調査を終わらせようとする調査官がほとんどなのです。つまり、税務調査に時間をかけられない事情が存在する場合もあるということです。

これらはあくまでも税務署の都合ではあるのですが整理をすると、税務調査にバラつきがあるのは下記のような理由です。

・調査官によって対応が違う

・税務調査の時期によって対応が違う

だからこそ、税務調査というのはいつでも緊張感をもって臨まなければならない、ともいえるのです。


税務署職員は公務員であって、給料は税金から払われているのですが、だからといって調査官を卑下する理由にはなりません。

経営者の中には税務調査で、調査官に対して感情的に主張する方がいるのですが、これは税務調査の結果を良くすることにはなりません。

こんな例えはいかがでしょうか。駅を歩いていたら肩がぶつかりました。相手方の対応は大きく2つに分けることができます。

①「すみません!」
②「おい、何ぶつかってんだよ!」

本当はこっちが腹をたてていても、相手が①の対応だったら、こちらもつられて謝ってしまいます。「こちらこそすみませんでした」と。
しかし一方で、②だったらどうでしょうか。肩ぐらいぶつかるだろうと、本当は腹をたてていなくても、わざわざケンカを売ってくる相手には、こちらも腹がたって当然だと思います。

税務調査もまったく同じだということです。調査官は確かに公務員ですが、人間なのです。感情論で言われたら調査官も感情的になっても仕方がないのです。

「お前らの仕事は貧乏人から税金を持っていくことか!」こんな勢いで調査官に言ったらどうなるでしょうか。調査官も感情的になればこう反論してくるはずです。

「間違っているものを指摘しているだけでしょう!」
「ちゃんと税金を払ってから言ってくださいよ!」
「本当はこの辺で税務調査を終わらせてもよかったのに、もっとイジワルしてやろうか!」

調査官がこうなってしまえば、会社(経営者)として得することなどあるでしょうか。調査官をけしかけることにしかならないのです。

では、税務調査をどう対応すればいいのでしょうか。これは、常に理論的に話すことです。
法律だけが理論ではありません。業界の商習慣や、過去の経緯などは経営者の方しか知らない重要な情報であることが多いのですから、その点を主張することが重要なのです。

感情的になるくらいであれば、税務調査から席を外した方がいいでしょう。感情的になったらこちらが負けなのです。

税理士でも判断が迷うポイントの1つに、外注費なのか給与なのかという問題があります。単純にいえば、従業員(社員やアルバイト)に支払うお金は給与で、外部の業者に払うお金は外注費となるわけですが、実際にはこの判別が明確にできない場合があるのです。この点はよく、税務調査でも問題なる部分です。

会社としては、外注費として処理したいケースがほとんどです。なぜなら、給与ではなく外注費となると、

①消費税が減る(給与だと消費税は減らない)

②社会保険料が不要になる(給与なら社会保険に加入しなければならない)

の2点が大きく違うポイントなのです。

しかし税務調査では、外注費として処理したものを疑ってきますし、実際に判別が難しいので頭が痛いところでもあります。

例えば、このようなケースはどうでしょうか。雑貨を販売する店舗を営んでいる会社ですが、最近はホームページを作成して、インターネットでも雑貨の販売をしています。当初、ホームページは外部の業者に作ってもらい販売を開始しましたが、思った以上にホームページから売上があがりました。

しかし実際にホームページでの販売をしてみると、楽天など他のサイトでも販売しようと考えたり、新製品などを追加してもらうなどの作業が都度発生することもあり、社内にインターネットに詳しい人間を置きたくなりました。

そこでたまたま、知人の紹介でネット販売に詳しい人が見つかったのです。彼はまだ若いのですが、会社に勤めているわけではなく、いわゆる「フリーランス」として1人で働いています。この方に依頼して、社内に週3~4日常駐してもらい、ホームページの改修をお願いしました。

さて、この方に支払うお金は給与でしょうか?それとも外注費でしょうか?

非常に単純化して書きましたが、実はこれらの情報だけでは判別できません。会社側がパソコンを用意し、インターネット回線も会社のものを使用して作業をした場合、外注費ではなく給与と税務署に言われる可能性が高くなります。なぜなら、仕事をする道具・材料を会社が提供しているのだから、従業員と変わらないではないか?という論理です。

では外注費と給与を判別する基準はどこにあるのでしょうか。

次回詳しく解説したいと思います。

外注費なのか給与なのかは非常に難しい問題ではありますが、判別するための基準を列挙すると、下記のようになります(あくまでも総合的に判断することにご留意ください)。

①会社への属性
その会社の仕事を行う場合、その会社の承諾を要するかどうか

②業務の裁量権
個々の作業について指示を受けるか、その人の代わりに他人へのアウトソーシングが許容されているか

③勤務形態
勤務時間、勤務場所の拘束を受けるか

④支払形態
・定期の月額払い等によるものか、または完成従量によるものか
・定期昇給・退職金の支給等の取り決めの有無
・残業手当等、賞与支払いの取り決めの有無
・タイムカード、出勤簿管理の有無
・請求書発行の有無
・支払日が会社の従業員への給与支払い日と同じか、外注先に支払う日と同じか

⑤福利厚生面
・社会保険の加入・厚生施設の利用など、従業員との取扱いに差があるか
・忘年会などに出席して会社負担になっているのか、自己の負担によるか

⑥その他
・原材料・作業用具の支給状況、経費の負担状況
・引渡し未済品の不可抗力により滅失の場合の、その報酬請求権

外注費として処理していることに悪意はなくとも、税務調査では上記の基準から判別され、否認指摘を受けることもあります。

外注費としたいのであれば、以上の基準を再度チェックし、給与だと言われないよう準備しておく必要があるのです。

税務調査を何度も受けると、調査官はどのようなものを、どのような流れで見ていくのか、だいたいのところを把握することができるようになります。しかし実際のところ、そう何度も税務調査を受けたことがある経営者はいないもの。今回は税務調査で、調査官が見ているものを解説します。

まず税務調査が始まると、「事業概況」のヒアリングから入る場合が多いです。つまり、会社を設立した経緯や現在の事業の内容等を、調査官が概略的に把握したいのです。ここは税理士ではなく経営者の出番なのですが、調査官はこの場面で経営者の人柄・性格を把握しようともしています。

税務調査は確かに、会社の数字をチェックするのですが、あくまでも人対人の関係性の中で行われるものなのです。こちら側としても、調査官の人柄や性格によって対応が変わるのと同じように、調査官もこちらのことをチェックしているのです。

さて次は、調査官が帳簿のチェックを始めます。調査官が持っている資料は、あくまでも税金の申告書だけ。どのような計算過程でその申告書ができたのかはわかっていません。これを帳簿から把握しようというわけです。
帳簿は主に「元帳(もとちょう)」と呼ばれるものをチェックするのですが、税理士が記帳代行業務をしている場合には、このあたりは税理士が整理しています。

ここで、普段から準備しておくべきこととしては;

①帳票類の整理
調査官は帳簿を見ながら税務調査をしているのですが、ここで間違いなく提示を求められるのが帳票類です。帳票類とは原始資料とも呼ばれるもので、請求書や発注書、領収書や契約書のように、売上や経費を計上する基となった資料のことです。
取引先からの請求書や発注書・見積書などはメール等の電子データの場合も多いですが、調査官に提示を求められたらすぐに提示できる状況にしておく必要があります。間違っても「探しましたがありません」では通りません。

②経理処理の流れ
どういう流れで売上を計上しているのか、たとえば、取引先に見積もりを提示し、先方から受注した段階で請求書を発行してから売上計上など、経理処理の流れを明確に説明できる資料があればいいでしょう。
もし、資料がなければ、口頭での説明で問題ありません。

調査官が帳簿・帳票類のチェックをしながら、同時にチェックしていることがあります。

①経営者や従業員の発言
数字をいくら眺めても、調査官は誤りを発見することはできません。そこで、経営者や従業員にヒアリングしながら、端緒(誤りのきっかけ)を見つけようとするのです。調査官との会話も、余計なことを言うと痛い目にあうこともありますので注意が必要です。

②会社に余計なものを置かない
調査官は会社に置いているものをチェックしています。具体的には、銀行からの贈答されたカレンダーがあって、その銀行と付き合いがなければ、「その銀行に隠し口座があるのでは?」と疑われるわけです。
また、ゴルフバッグを社内置いている経営者の方もいますが、調査官からすれば格好のネタです。「社長、ゴルフ好きなんですか?」から始まり、プライベートのゴルフ代が経費になっていないかチェックされることになります。

③辻褄が合わないことはやらない
法人で所有する車を、役員等がプライベートでも使用していると指摘されるケースが多くあります。実際には仕事での利用がほとんどで、たまにプライベート使用であれば問題ないのですが、実態が主にプライベートと認定されると経費になりません。
ここでいくら「ほとんど仕事で使っています!」と主張しても、車が常に自宅の駐車場にとめられているとか、仕事で使う理由がない、となってくると厳しい状況に陥るわけです。
誰が考えても辻褄が合わないようなことは、税務調査で指摘されるものと考えておいた方がいいでしょう。

④個人と法人を明確に区分しているか
接待交際費などで指摘されることが多いのですが、経営者個人の支出が会社の経費に入っていないかは、絶対にチェックされるポイントです。
「個人で負担している(法人で経費にしていない)飲み代・ゴルフ代もあって、それはこういう基準なんです」と説明できれば完璧でしょう。そこまではできなくても、どの取引先と行ったのかくらいは説明できるようにしておきたいものです。

平成23年に税制改正が行われ、税務調査の手続きに関する法律が大きく変わることになりました。この改正は、平成25年1月1日以降に行われる税務調査から適用になります。

もちろん、改正内容の詳細についてすべて、経営者として知っておくべきというわけではありません。最低限知っておくべきポイントに絞って解説したいと思います。

なお、法律に改正にともなって、国税庁より一般納税者向けにわかりやすく解説したサイトが公開されていますので、詳細を知りたい方はこちらをご覧ください。

「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」
https://www.nta.go.jp/sonota/sonota/osirase/data/h24/nozeikankyo/ippan02.htm


またこのサイトに、「今般の改正は、税務調査手続の透明性及び納税者の予見可能性を高め、調査に当たって納税者の方の協力を促すことで、より円滑かつ効果的な調査の実施と、申告納税制度の一層の充実・発展に資する等の観点から、調査手続に関する従来の運用上の取扱いを法令上明確化するものであり、基本的には、税務調査が従来と比べて大きく変化することはありません。」と記載あるとおり、今までの税務調査と何かが根本的に変わったというわけではありません。

さて、まず知っておくべきことは、同じ修正申告を提出することになったとしても、加算税(通常は10%)が課されるかどうか区分が明確になりました。

つまり、税務調査の結果として誤りが見つかり、修正申告するのであれば加算税が課されますが、(税務調査ではなく)税務署からの電話などにより誤りを指摘されて、修正申告を提出することになった場合は、加算税が課されないのです。

今までは、実務上税務調査ではなくても、税務署からの指摘に基づくものであれば加算税が課されたケースが多かったのですが、今後は税務調査なのか、そうではないのかによって取扱いが明確に区分されるのです。

とはいえ、税務署から突然電話などが入って、「誤りがあるので修正申告してください」と言われても、それが税務調査の範囲なのか、そうでないのかはわからないと思います。

そこで今後のルールは「税務署の担当者は、納税者の方に調査又は行政指導を行う際には、具体的な手続に入る前に、いずれに当たるのかを納税者の方に明示することとしています。」となり、税務署側が区分を伝えるということになりました。税務署から連絡があれば、どちらなのかきちんと聞いておかなければなりません。

最近は、会計ソフトへの入力だけではなく、取引先との請求書等のやり取りもメールで行われることが当たり前となっています。従来の税務調査では、膨大な紙の資料を調査官に提示することもありましたが、昨今はペーパレス化の影響で紙の提示が減っています。

しかしここで、税務調査において新たなトラブルが起ることもしばしばあります。たとえば、調査官が「請求書など取引先とのやり取りを電子で行っているのであれば、パソコンを触らせてください」と要請してくるようなケースです。

ここで調査官にパソコンを貸してしまうと、ヒドいケースでは「ファイル復元ソフト」などをインストールされることまであり、税務調査でここまでやっていいのか?というトラブルが発生することもあるわけです。

以前はこの点については、何も規定がないため、何が正しくて何が悪いのかの切り分けが不明確だったのですが、国税庁のサイトでは、その区分が明示されました。

質問:「提示・提出を求められた帳簿書類等の物件が電磁的記録である場合には、どのような方法で提示・提出すればよいのでしょうか。」

回答:「帳簿書類等の物件が電磁的記録である場合には、提示については、その内容をディスプレイの画面上で調査担当者が確認し得る状態にしてお示しいただくこととなります。一方、提出については、通常は、電磁的記録を調査担当者が確認し得る状態でプリントアウトしたものをお渡しいただくこととなります。また、電磁的記録そのものを提出いただく必要がある場合には、調査担当者が持参した電磁的記録媒体への記録の保存(コピー)をお願いする場合もありますので、ご協力をお願いします。(注) 提出いただいた電磁的記録については、調査終了後、確実に廃棄(消去)することとしています。」

このように明記されたことで、

・パソコン自体を調査官に触らせる必要はない
・原則として必要なデータを画面で見せればいい
・プリントアウトが必要な場合もある

となりましたので、調査官がパソコンを触りたいと言っても「画面で見せます」と切り返すことができるのです。

前回から引続き、税務調査がどのように変わったのかをお伝えしたいと思います。
 平成25年以降に行われる税務調査の手続きが大幅に変更されることになりましたが、去年9月に国税庁より発行されたこのパンブレットが、非常にわかりやすくまとめられています。


「パンフレット「税務手続について(国税通則法等の改正)」

このパンフレット内には、四角の点線枠で囲まれた部分が改正のポイントとして明示されていますので、その部分だけでも目を通してください。

以下、これらのポイントについて解説します。

「(4)帳簿書類の預かりと返還
調査担当者は、税務調査において必要がある場合には、納税者の承諾を得た上で、提出された帳簿書類などをお預かりします。その際には、預り証をお渡しします。
また、お預かりする必要がなくなった場合には、速やかに返還します。」

⇒去年までの税務調査でも実務上は実施されていましたが、今年から法定化されました。実態は去年までと変わりません。

「(6)調査結果の説明と修正申告や期限後申告の勧奨
税務調査において、申告内容に誤りが認められた場合や、申告する義務がありながら申告していなかったことが判明した場合には、調査結果の内容(誤りの内容、金額、理由)を説明し、修正申告や期限後申告(以下「修正申告等」といいます。)を勧奨します。

また、修正申告等を勧奨する場合においては、修正申告等をした場合にはその修正申告等に係る異議申立てや審査請求はできませんが更正の請求はできることを説明し、その旨を記載した書面をお渡しします。」

⇒去年までは税務署側に「説明義務」がありませんでしたので、どの項目に誤りがあって、なぜその金額がいくらになるのか説明を受けられない場合もありましたが、今後は修正申告を提出する(つまり、税務調査で誤りがあった)場合は、税務署から詳細は説明をしてもらえるようになりました。

これらは、納税者として有利な改正と言えます。

税務調査に関するもの以外にも、大きな改正がありました。それは、「更正の請求の期間が5年になった」ことです。税務調査に直接関係ありませんが、非常に大事なことなので、説明しておきたいと思います。

「更正の請求」とは、提出した税務申告書に間違いがあって、本来より多くの税金を申告・納付している場合に、「納めすぎの税金を還付してください」という手続きをいいます。

ちなみにこれとは逆に、本来より少ない税金しか申告・納付していない場合に提出する書類を修正申告といいます。

以前は、「更正の請求」と「修正申告」の年分はこのように決められていました。

更正の請求:1年

修正申告:5年(脱税などの場合は7年)

これはちょっとおかしいですよね。同じ間違いがあっても、税金が増えるなら5年さかのぼれるのに、税金が減るなら1年しか適用できないわけですから。

この不平等が解消されることになりました。更正の請求の期間が5年になったわけです。

ただし、更正の請求をするのに、新たな条件が加えられました。

①更正の請求が5年できる年分

更正の請求が1年しかできない、5年できる区分はどこにあるかというと、「平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来する」ものです。例えば、3月決算法人であれば、平成24年5月末日(3月末から2ヶ月後)に申告期限がくるものについては、その日から5年以内であれば更正の請求をすることができますが、平成23年5月末日に申告期限があったものについては、1年しか更正の請求ができません。

今後しばらく年数がたてば「平成23年12月2日以後に法定申告期限が到来する」ものばかりになりますので、更正の請求は5年間できると考えて間違いありませんが、現時点では、1年しかできないのか、5年できるのか混在しているので注意が必要です。

②証明する書類の提出

今後は、「更正の請求」をする理由の基礎となる事実を証明する書類を添付しなければなりません。

③罰則

わざとウソの更正の請求をして、税金の還付を受けようとした場合に備えて、新たに罰則ができました。

平成25年以降行われる税務調査から、手続きが大きく変わったことはすでにお伝えしているとおりです。
その中でも経営者の方々に直接的に影響があるのは、税務調査の事前通知のやり方・内容が変わった点です。

今まで(平成24年以前)は、税務調査がある場合、税務署から税理士か法人(個人事業主)に事前に連絡がありました。税理士への連絡が先か、法人への連絡が先かは、地域によって税務署の運用が違っていたのが実情なのですが、これが全国統一されることになりました。

原則は、法人(個人事業主)から先に連絡がいきます。
(ただし、無予告調査といって、事前連絡がない税務調査もあり得ます)

税務署から税務調査の事前連絡があった場合は、「顧問税理士に任せているので、そちらに連絡してください」と伝えていただければ問題ありません。

しかしこう答えても、調査官の中には「税理士先生の方にはもちろん後ほど連絡させていただきますが、通知しなければならない事項がありますので、少しだけ話を聞いてください」と食い下がる人もいるようです。

このような場合に、「では、経営者として調査官から電話で何を聞いておけばいいんだ?」という部分を解説します。

税務調査の事前連絡の項目ですが、まず法律(国税通則法第74条の9)には、下記7つを調査官が伝えるように規定されています。

一  質問検査等を行う実地の調査(以下この条において単に「調査」という。)を開始する日時
二  調査を行う場所
三  調査の目的
四  調査の対象となる税目
五  調査の対象となる期間
六  調査の対象となる帳簿書類その他の物件
七  その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項

次回詳細を解説いたします。

 前回から引続き、税務調査の事前連絡において、法人(個人事業主)側で何を聞き取らなければならないか、というポイントです。

前回挙げた7項目のうち、前半の6項目は読んで字のごとく、日時や場所等を聞くことになります。ここで1点大事なのが「調査の対象となる帳簿書類その他の物件」という項目です。これは税務調査でどんな書類を準備しておけばいいか、というものです。多くの場合、「(総勘定)元帳、請求書、領収書などですね」と言われるはずですが、裏を返せば「準備しておいてほしい」と言われたものだけ準備すればいい、と解釈できます。この点をきちんと聞いておくと、余計なものを用意する手間は省けます。

また、7つめの項目にある「その他調査の適正かつ円滑な実施に必要なものとして政令で定める事項」ですが、それを定めたものが別の法律(国税通則法施行令第30条の4)に規定されています。

1.調査の相手方である法第74条の9第3項第1号に掲げる納税義務者の氏名及び住所又は居所
2.調査を行う当該職員の氏名及び所属官署
3.法第74条の9第1項第1号又は第2号に掲げる事項の変更に関する事項
4.法第74条の9第4項の規定の趣旨

この点、法律の規定はわかりにくいので解説を加えておくと、
1:みなさんの名前と住所を伝えるという当たり前の事項です
2:税務調査を行う調査官の名前を伝えられます
3:一度決めた調査の日時・場所を変更する場合に、変更した後の決め事を伝えます
4:上記のように通知した事項以外におかしな点が出てくれば、再度通知することによって、さらに書類の提示などを求めることができるという内容です

細かい部分になりますが、税務調査の手続きが大きく変わったのと同時に、細かく規定されることになりました。事前通知の項目は多いのですが、調査官が言ったことを漏らさないようメモをとっておくことをおすすめします。

 税務署の調査官は、毎日のように税務調査をするのが仕事です。調査官は公務員ですから、一般企業よりもきつく管理されていることは間違いありません。

調査官には税務調査のノルマが与えられています。通常「調査官のノルマ」と聞くと、追徴税額のノルマだと思われがちですが、違います。調査官のノルマは「税務調査の件数」なのです。
つまり、これだけの期間で○○件の税務調査をしなければならない、と決められているのです。

調査官には税務調査の件数ノルマが課せられているということは、調査官側の心理としては、税務調査1件1件に時間をかけることができないということでもあります。

一方で税務調査というのは、1件1件にかかる時間はバラバラなのが現実です。時間がかかる調査もあれば、あっさり終わる調査もあるのです。これは、調査官が調べたいことが不明であればあるほど、結果として長引くことになりますし、当然脱税などをしている納税者に対する調査は数ヶ月かかることもあるのです。

こう考えると調査官も、事前には1件の税務調査でどれだけ時間がかかるかわらかないですし、少なくとも調査をする前は「件数のノルマをこなすためには、時間がかからない方が嬉しいな」と考えているのが普通なのです。

ここまでの前提を踏まえると、税務調査の対応も変わってきます。

まず、税務調査は通常事前に連絡があるのですが、この段階で調査の日数が長いと感じた場合の対応です。
例えば、以前は2日の税務調査だったのに、事前の予約段階で3日だと言われた場合、「前回は2日でしたよ。その頃から会社の規模等も特段大きくなってはいません。とりあえずは2日でいいではないですか?」と切り返してみることです。

このようにこちらから主張してはならない、と思い込んでいる経営者の方も多いのですが、実際のところ調査官も税務調査の日数は少ない方がいいのですから、思惑さえ合致すれば、「では2日にしましょう」と合意できるケースが多いのです。

また、税務調査を嫌う気持ちはわかりますが、税務調査が長引くことの方が嫌かと思います。税務調査は時間的負担とともに、精神的負担もかかるものです。

税務調査を嫌う気持ちを抑えて、当初から調査官に誠実に対応することで、税務調査が早く終わる可能性が高くなります。これは何も媚びへつらう、ということではありません。丁寧に対応すれば、結果的に調査が早く終わるのです。

 たまになのですが、異常に長引く税務調査があります。

通常、税務調査というのは、
・2~3日間の日程(会社の規模によって変わります)
・その中で不明点等があれば、提出する必要がある
・最終的な可否を別途協議する日程(来社か税務署に行く場合もあり)
・修正申告書の提出など

の流れになります。

ですから、当初2~3日だけ見越しておけば、そのあとは流れによって変わるのですが、それでも1~2日で終わることが多いのです。

しかしケースによっては、2~3ヶ月かかることもあるので、経営者としてはたまったものではありません。

確かに、担当の調査官も1件の税務調査だけを担当しているわけではなく、さらに上司からの指示などもあることは容易に理解できます。しかし、たいした問題点がなくても2~3ヶ月かかる税務調査があるのですから、不思議といえば不思議です。

調査官の事情はともかくとして、税務調査を受ける方としては、期間を不当に延ばされていいことなど1つもないのですから、特殊な事情がない場合は、調査官に電話連絡等をして「早く終わらせて欲しい」旨の主張をすることが大事なのです。

法律上は「○○日以内に税務調査を終わらせなければならない」という法律はありません。しかし、税務調査が長引くことで、会社・経営者に本業への支障があることは確実です。

そこで、この法律があることは知っておいた方がいいでしょう。

国家賠償法第1条

国又は公共団体の公権力の行使に当る公務員が、その職務を行うについて、故意又は過失によって違法に他人に損害を加えたときは、国又は公共団体が、これを賠償する責に任ずる。

この法律にある「他人に損害を加えたとき」には、税務調査が長引くことにより、事業に損害が発生したり、経営者に精神的被害があることまでを含んでいます。

法律を根拠に「不当性」を主張すれば、長引く税務調査を終わらせることも可能なのです。

税務調査というのは、1年の中でも大きく2つの時期に分かれています。少しややこしい部分もあるので、税務署的な視点から解説しておきましょう。

国税という組織は、1年の始まりを7月としています。ちょっと変わっているので、一般的な考え方からすると、かなり違和感があるところです。

国税は1年を上期と下期に分けていますが、7月から始まりますから、毎年

7~12月:上期

1月~6月:下期

としています。

ということは、春の時期は下期ですね。

下期は少し特別で、個人の確定申告があります。確定申告は2~3月中旬までなのですが、この時期は税務調査に立会いする税理士も忙しく、また税務署内も確定申告の対応に忙しいという事情もあって、特別な事情などがない限り、確定申告時期に調査が行われることはありません。

さらに税務署内の事情が絡んできます。税務署の職員は、3年に1回程度の頻度で転勤(他の税務署に異動)するのですが、この転勤時期は7月上旬です。しかも、転勤になる調査官は、直前まで転勤になるかどうかを明示されていないのです。

ということは、春の調査と秋の調査には次のような違いがあるといえます。


【春の税務調査】
・時期が短い
・調査件数が少ない

【秋の税務調査】
・時期が長い
・調査件数が多い

春と秋で、税務調査にもこれだけの違いが出てくるのです。

税務署の職員は7月上旬に転勤(異動)があり、誰が転勤になるのかも知らされていません。またここが大事な点なのですが、税務調査を担当している調査官は、6月までで税務調査を締めなければならないのです。

なぜなら、税務署の1年は6月に終了するからです。

ちょっとわかりにくいので、もう少し説明を加えましょう。

11月に税務調査があったとします。調査の過程でいろいろな不明点なり、税務署と納税者(顧問税理士)に見解の相違があったとします。

そうなると税務調査は長引いていくのですが、年末までに終わらなかった調査は、(調査官からすると不本意かもしれませんが)年越しすることになります。

では、同じケースが春だったらどうなるのでしょうか。

5月に税務調査があったとします。同じように長引きます。しかし、かなり特殊な事情がある場合を除いて、7月まで延びる税務調査はありません。

これは、

・税務署の1年の締めが6月末であること
・担当調査官が転勤になるかもしれないこと
・転勤にならなくても担当から外れること

の3つの事情に起因しています。

さらに、・・・

税務調査を担当している調査官には引継ぎがありません。

普通の会社であれば、転勤・異動になれば仕事の引継ぎを行うのですが、税務調査は俗人的な判断をともなうことが多く、また実施している件数が多いため、本来は6月から7月の年度をまたぐ調査であったとして、引継ぎを行うことはありません。

ここまで書くと、気付く方も多いのですが、実は春の税務調査の方が対応は楽なのです。

秋の税務調査と違い、春の税務調査が延々と長引くことはありません。しかも、6月までに税務調査を終わらせたいのは、こちら(納税者)側の都合ではなく、調査官側の都合なのです。

時期によって税務調査の交渉のやり方は変わります。6月まで延びた税務調査であれば圧倒的に有利になるといえるでしょう。

 税務調査で多い指摘が、「交際費が同業他社と比べて多額なので、半分にします。」「交際費に私的な支出が入っているので、30%削ります。」といったものです。

本来税務調査とは、「この支出は社長個人の支出ですから、経費(損金)になりません。」など、個別に「これはいい」「これはダメ」と言われるものです。

しかし、個別に指摘するのが面倒なのか、調査官はよく「〇〇%は経費になりません。」と指摘してくるものです。

さて、この「〇〇%は経費になりません。」は正しいのでしょうか。

結論を先に書いておくと、適当な割合で否認することは、法律上何の根拠もありませんから、もし調査官にこのような否認指摘を受けても、受け入れる必要はまったくありません。

もちろん、このような指摘割合に根拠があるとか、もしくは受け入れた方が得などといった場合は別なのですが・・・

個別に「これはダメ」などと否認することを「実額課税」といい、一方「〇〇%は経費になりません。」などと否認することを「推計課税」と呼んでいます。


法人税法第131条(推計による更正又は決定)

税務署長は、内国法人に係る法人税につき更正又は決定をする場合には、内国法人の提出した青色申告書に係る法人税の課税標準又は欠損金額の更正をする場合を除き、その内国法人の財産若しくは債務の増減の状況、収入若しくは支出の状況又は生産量、販売量その他の取扱量、従業員数その他事業の規模によりその内国法人に係る法人税の課税標準を推計して、これをすることができる。


法律では推計課税を認めていますが、これが認められているのは、「帳簿書類がない」「税務調査を拒否する」など、実額による課税ができない場合に、推計課税する必要があるからなのです。

つまり、推計課税は税務署がいつでもできるものではなく、実額課税ができない場合の措置といえるのです。

ですから、税務調査を受け入れ、帳簿書類等を提示しているにもかかわらず、推計課税で否認指摘してくる調査官の主張を、受け入れる必要などまったくないのです。この点はぜひ知っておいていただきたいポイントです。

前回は「推計課税」について書きましたが、その際に書きました「交際費が同業他社と比べて多額なので、半分にします。」という否認指摘、これはどうなのでしょうか、というのが今回のお題です。

つまり、そもそも(接待)交際費は、同業他社と比べて多額なのであれば、本当に経費(損金)にならないのか、というポイントです。

法律では、法人における交際費をこのように定めています。


  租税特別措置法第61条の4(交際費等の損金不算入)


  第1項に規定する交際費等とは、交際費、接待費、機密費その他の費用で、法人が、その得意先、仕入先その他事業に関係のある者等に対する接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するものをいう。


つまり交際費とは、「法人が支出する経費」のうち、「接待、供応、慰安、贈答その他これらに類する行為のために支出するもの」を指します。
ですから、個人的な支出は経費(損金)にならないのは当然として、法人が支出するものであってそれが取引先などを接待するものであれば、経費になるというわけです(ただし、損金になるための上限金額は設定されています)。

ここから明らかであるとおり、交際費は何も同業他社と比べて高いからダメというわけではないのです。

では、なぜ調査官が同業他社と比べたがるかというと、役員報酬や役員退職金と話がごっちゃになっているからです。

役員報酬や役員退職金は、「法律的に」同業他社と比べて異常に高い場合には、損金にならないという規定があります。


法人税法施行令第70条(過大な役員給与の額)

内国法人が各事業年度においてその役員に対して支給した給与の額が、当該役員の職務の内容、その内国法人の収益及びその使用人に対する給与の支給の状況、その内国法人と同種の事業を営む法人でその事業規模が類似するものの役員に対する給与の支給の状況等に照らし、当該役員の職務に対する対価として相当であると認められる金額を超える場合におけるその超える部分の金額


交際費については同業他社と比べて多額であっても何ら問題ありませんから、調査官の誤った指摘にはきちんと反論しましょう。

法律改正があり、今年(平成25年)以後に行われる税務調査から手続きに関する法規則が大きく変わりました。そのうちの1つが「理由の附記」と呼ばれるものです。

この聞きなれない制度が大きく変わったことによる、税務調査への影響は大きいので、解説していきましょう。

税務調査を受けた場合、結果として3つのパターンが存在します。今までは法定化されていなかったのですが、税務調査に関する改正で3つが法定化されました。


①申告是認(しんこくぜにん)
「税務調査を行いましたが、申告した内容に誤りがありませんでした。」という場合です。経営者にとってみればもっとも嬉しい結果です。

②修正申告
税務調査で誤りが見つかった場合、修正申告になることの方が多くあります。「修正申告=誤りの指摘に納得して提出するもの」です。

③更正
更正とは税務調査の結果、誤りが見つかり、「こう直しますよ、追徴税額はこれだけになります」という税務署からの処分です。修正申告と違うのは、会社(経営者)が納得していないということです。

さて、税務調査で更正(処分)となる場合、税務署(調査官)はその処分をする理由や追徴税額の金額を説明しなければならなくなりました。つまり、説明もなく処分はできなくなったのです。これを「理由の附記」と呼んでいます。

実は今でも同じ制度はありました。しかし去年までは、青色申告者に対する更正だけに理由の附記がなされていました。つまり、白色申告であるとか、青色申告制度がない税目、たとえば消費税や相続税には、更正という処分をされても、理由の附記がなかったのです。

法改正により、今後は納税者にとって「不利益な処分にはすべて理由の附記が必要」とされました。これにより、税務署(調査官)も更正する場合には、処分の理由を明確にする必要があるため、処分に対して慎重にならざるをえなくなったのです。これにより、税務署からの安易な処分は、今後急激に減るものと予想できます。

前回解説した「理由の附記」ですが、実は更正(処分)の場合にのみ必要とされたわけではありません。あくまでも、「納税者にとって不利益な処分にはすべて理由の附記が必要」とされたわけです。

では、税務調査において更正以外に不利益な処分とは何があるでしょうか。いくつか考えられるのですが、もっとも不利益になるのは「重加算税」でしょう。

通常、税務調査で否認されると、本税(本来払うべきであった税額の不足分)に過少申告加算税10%が上乗せされるのですが、重加算税になると35%もの上乗せになります。

さらに、重加算税になると延滞税(利息分)の計算も高くなりますので、まさにダブルパンチとなるわけです。

重加算税の要件は、簡単にいうと「仮装または隠ぺい」していたことです。「仮装または隠ぺい」とは、たとえばこのような行為です。

「隠ぺい」:二重帳簿の作成・売上除外・架空仕入・架空経費・棚卸資産の除外・雑収入の除外等

「仮装」:取引上の架空名義の使用・通謀虚偽表示(民法94条1項)・虚偽答弁等


簡単にいえば、税金をごまかそうと悪いことをしていれば重加算税が課されるというわけですが、実態はそうではありません。

法人への税務調査が行われた件数のうち、20%に重加算税が課されています。20%もの法人が「仮装または隠ぺい」行為をしていたとは到底考えられません。修正申告を提出したことで税務調査が終わって、後日税務署からの通知を見てみると、なんと重加算税の通知だったという話もあるくらいです。

重加算税も税務署からの「処分」にあたります。つまり、今までは、重加算税の処分をする場合、税務署からその理由などを提示する必要がなかったのです。そのため、「仮装または隠ぺい」などしていなかったとしても、税務調査で重加算税を課されるケースが多くあったのです。

すべての処分に理由の附記が必要になったことにより、重加算税の処分をする場合にも、通知書に理由を載せる必要が生じました。

これによって、今まで曖昧な基準で処分されていた重加算税も、今後は税務署も理由の附記が必要ですから、安易な処分はしてこないはずです。

「理由の附記」とは、納税者によって非常に有利な法改正であり、ぜひ覚えておいておきたい制度です。

 税務調査の際には通常、1~2週間前に税務署から事前連絡があります。調査日をいつにするか、日程調整して決めるのですが、この事前連絡から税務調査の当日までに注意すべきことがあります。

まず、税務調査で誤りなどが見つかり、修正申告した場合を説明しておきましょう。

当初の申告で100の税金を申告していた会社が、税務調査において正しい税金の額が150になったとします。この差額の50を「本税」と呼びます。
しかし、税務調査で50を支払えば済むわけではありません。少ない税額で申告していたわけですから、遅れて納付したことに対する利息がつきます。これを「延滞税」と呼びます。

さらに、本税50に対して一定率の罰金が課されます。これを「加算税」と呼んでいます。
加算税は、通常10%(過少申告加算税)なのですが、増加税額が50万円を超えた場合、その超えた部分については15%になります。また、会社が不正行為などをして税金をごまかしていた場合には35%(重加算税)の罰金になります。

これら「本税+延滞税+加算税」を合計した金額を追徴税額と呼んでおり、これを修正申告した日に納める必要があります。

しかし、これには例外が1つあります。それは、「自分で誤りに気付いて、自ら修正申告をすれば、加算税が課されない」というものです。
つまり、税務調査で指摘されたから罰金が課されるのであって、自ら誤りを認めたものには罰金を課す必要がない、という趣旨なのです。

話を戻すと、事前連絡から税務調査の当日までにすべきことは、この例外を利用することです。
つまり、税務調査の当日までに、税務申告書を見直して、誤りなどがないかどうかをチェックすることが重要です。
この事前チェックで、もし誤りが見つかっても、税務調査の当日までに自ら修正申告をすれば、罰金である加算税がかかりません。

加算税が10%であれば、それほど痛みは感じないかもしれません。しかし、会社内で誰かが不正などをしていた場合、35%もの重加算税が課税されます。さらに、重加算税になる場合、延滞税も高くなるという規定があります。

税務調査の前に税務申告書を見直しておいて、誤りがなければいいですが、誤りがあったとすると、事前チェックをしておくだけで、最低でも本税の10%、高ければ50%程度の余計な追徴額を減らすことができます。

この制度は知らない人が多いので、ぜひ活用していただきたいと思います。

税務調査を受けていると、困った状況になることがあります。調査官に質問されたので、回答しようと思い、明細などの資料を探してもその資料が見つからないような場合です。
何も悪気があって資料を捨てたわけではないにせよ、資料がなければ答えようもないわけですし、これでは税務調査自体も進まないわけです。

さて、このように資料がないケースでは、税務調査はどうなるのか?

このようなケースに備えて、法律では「推計課税」という制度があります。
推計課税とは、資料などがない場合に、何か特定の金額・割合から、まさしく推計で税額を算出する方法のことです。

そもそも推計課税とは、

・悪意があって資料等を破棄した者にも課税できるようにするため
・悪意はないにしろ、資料等がない場合に正しい税額を算出するため

に設けられている制度だといえます。

しかし、税務調査の現場では、調査官が無理にでも推計課税を使って課税しようとするケースがあるので注意が必要です。

たとえば、飲食店を3店舗を営む会社で考えてみましょう。飲食店の場合、業種が異ならない限り、店舗ごとの粗利率(粗利益÷売上)が大きく異なることはありません。しかし現実には、顧客層が違う、割引券を発行しているなど、店舗ごとの粗利率がかい離することもあるわけです。

調査官は「店舗ごとの粗利率が大きく異なることはない」という点に着目し、「なぜこれほど店舗ごとに粗利率が違うのですか?」「粗利率が低い店舗で売上を除外しているのではないですか?」「原価を水増ししているのではないですか?」と疑ってくるわけです。

しかしこの指摘に、調査官も何か決定的な証拠があるわけではなく、あくまでも数字の傾向から疑っているにすぎません。 このようなケースで、調査官が「粗利率が店舗ごとにこれほど違うのはおかしい!適正な粗利率を算出して、全店舗それに合わせてください」などと、推計課税を強要してくることもあるのです。

推計課税はどんな場合でも適用できるものではなく、要件が3つあります。すべての要件が揃っていなければ、推計課税はできないのです。

①内国法人(居住者)が対象であること
  ②更正(決定)する場合にだけできる
③青色申告者にはできない

ですから、青色申告をしている会社が、調査官の指摘に従って、推計課税を根拠とした修正申告を提出する必要などないのです。
この要件はぜひ知っておいてもらいたいものです。

「交際費」といえば、お客様や取引先と飲み会で支出した費用(接待交際費)を指すと考えるのが、一般的です。
しかし、税金(法人税)の世界でいう「交際費」というのは、かなり違う概念を持っています。

まず交際費の税務処理を簡単に説明しておくと、原則損金にならないと定められています。ただし、資本金1億円以下の場合は、600万円以下の部分は10%、600万円超の部分のみが損金になりません。また、平成25年度税制改正によって、平成25年4月1日以降に開始する事業年度からは、資本金1億円以下の中小企業においては、年間800万円以下の部分は全額損金になりますが、800万円超の部分は損金にならないという取扱いになります。

さて、税務上の交際費の概念なのですが、飲み食いだけではありません。

例えば、自社の社名を入れたゴルフボールを作成し、取引先に渡した場合、「広告宣伝費」になりますが、取引先の社名を入れたゴルフボールであれば、「交際費」になります。

この違いは、自社の名前を入れるのは、自社の名前を広めたいという目的なので広告なのですが、相手方の名前を入れるというのは、「相手方の歓心をかうような行為」に該当するため、飲み食いと同じで交際費と判断されるわけです。これは、飲み食いがゴルフボールに形を変えただけだろうという根拠です。

実は、支出が交際費になるかどうかは非常に微妙な判断をともなう場合が多くあり、税の専門家である我々税理士でも、判断に迷うことが多くあります。
ただ、経営者として知っておいていただきたいのは、交際費と指摘される可能性のあるケースです。
注意しておかなければ同じ支出でも、税務調査で交際費と指摘されるだけで、追徴税額が発生してしまうのです。
交際費と混同しやすい支出は下記のようなものがありますが、全般的に知りたい場合は、国税庁のサイトからこちらをご覧ください。

「リベート(売上割戻し)」「情報提供料」「広告宣伝費」「福利厚生費」

このような支出がある場合は、交際費になる可能性があると考えてください。

前回から引続き、交際費との区分をご説明します。

税務調査でよくモメる交際費の区分に、「情報提供料」があります。簡単にいえば、顧客や案件を紹介してもらい、ビジネスが成立した場合に謝礼(キックバック・リベート)を支払うような場合です。

このような支出をする業種としては、建築業や不動産業・保険代理店業を筆頭に、通常行われている行為といえます。

では、なぜこのような謝礼(情報提供料)が、交際費と指摘される可能性があるのでしょうか?

前回書きましたが、交際費は税制上どのようなものかというと、「相手方の歓心をかうような行為」、つまり相手方に対してお金を使うことで、相手が自分のことを気に入って仕事をまわしてくれるような行為に対する支出を指すわけです。

このように広く定義すると、情報提供料も特定の相手方に支出し、かつ相手の歓心をかうような行為と言えます。

そこで税制上は、下記3つの要件をすべて満たしている場合は、情報提供料として全額損金にしていい、裏を返せば、これらの要件を1つでも満たさなければ、交際費と判断するというルールを作っています。
(租税特別措置法関係通達61の4(1)-8)

(1) その金品の交付があらかじめ締結された契約に基づくものであること。

(2) 提供を受ける役務の内容が当該契約において具体的に明らかにされており、かつ、これに基づいて実際に役務の提供を受けていること。

(3) その交付した金品の価額がその提供を受けた役務の内容に照らし相当と認められること。

いかがでしょうか。実務の現場では、支払う相手方と締結した「契約書がない」、何に対する情報提供料なのか説明できる状態にない、などの問題が生じている場合が多いのです。

情報提供料は、ビジネスで必要であることを考えると、経費(損金)になって当然と考えがちです。
しかし上記の要件を満たさないために、税務調査で交際費と指摘されるケースが多いのです。
契約書を準備するなど、事前準備をしておきましょう。

税務署も税務調査だけを行っているわけではありませんから、「税務調査」と一言でいっても、実はどこまでが税務調査なのかわからないケースもあります。

例えば、税務署からの問合せの電話や封書が届く場合。提出した税務申告書の内容について、不明点等があれば税務署から連絡が入ることもあるのですが、ただの問合せは、税務調査ではありません。

どこからが税務調査で、どこまでが税務調査ではないのか、これをきちんと区分する必要性があります。なぜなら、過少申告加算税(10%)が課されるのか、課されないのかは、税務調査が行われたかどうかで判断するからなのです。

たとえば、税務署に提出した税務申告書に誤りがあり、結果として追加で税金を納めなければならない場合、「修正申告」をすることになります。

この修正申告なのですが、2つのケースがあります。

①自主修正申告
自ら誤りに気付き、自ら修正申告をした場合は、過少申告加算税(10%)は課されません(遅れて税金を納付したわけですから、利息分である延滞税はかかります)。

②税務調査による修正申告
税務調査が行われ、調査官の指摘に基づいて、その内容に納得して提出した修正申告には、過少申告加算税(10%)が課されます。

つまり、自ら誤りに気付いて、自ら税金が足りなかったことを申請する人には、罰則的な規定である加算税は課さない、という規定になっています。

では話を戻すと、税務署からの問合せは、あくまで問合せなのであって、税務調査ではありませんから、結果として税務署の指摘通り誤りがあり、修正申告書の提出となっても、加算税は課されないのが原則です。

なお、税務調査は事前の予告があるのが原則ですから、事前の予告がない税務署からの連絡は、税務調査ではなく、ただの問合せと考えて間違いありません。

税務署からの問合せで修正申告しても、加算税が課される間違った処分もあり得ますので、この点注意してください。

前回から引続き、修正申告をしても加算税が課されないケースを説明していきます。

2013年7月以降に行われる税務調査から法改正があり、税務調査の手続きが大きく変わるにことになりました。

これに付随して制定されたルールがいくつかあるのですが、一般の方向けに解説しているものが、国税庁のホームページで公表されています。 「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」

この中に、下記の質疑応答事例があります。

【問】
税務署の担当者から電話で申告書の内容に問題がないか確認して、必要ならば修正申告書を提出するよう連絡を受けましたが、これは調査なのでしょうか。

【答】
調査は、特定の納税者の方の課税標準等又は税額等を認定する目的で、質問検査等を行い申告内容を確認するものですが、税務当局では、税務調査の他に、行政指導の一環として、例えば、提出された申告書に計算誤り、転記誤り、記載漏れ及び法令の適用誤り等の誤りがあるのではないかと思われる場合に、納税者の方に対して自発的な見直しを要請した上で、必要に応じて修正申告書の自発的な提出を要請する場合があります。
このような行政指導に基づき、納税者の方が自主的に修正申告書を提出された場合には、延滞税は納付していただく場合がありますが、過少申告加算税は賦課されません(当初申告が期限後申告の場合は、無申告加算税が原則5%賦課されます。)。

なお、税務署の担当者は、納税者の方に調査又は行政指導を行う際には、具体的な手続に入る前に、いずれに当たるのかを納税者の方に明示することとしています。

このように、税務署からの誤りの指摘があって、修正申告することになったとして、加算税は課されないというわけです。
ここで大切なのは、「税務署の担当者は、納税者の方に調査又は行政指導を行う際には、具体的な手続に入る前に、いずれに当たるのかを納税者の方に明示することとしています。」という部分です。

税務署から連絡があった場合、「この連絡は調査なのですか?それとも調査じゃない(行政指導)なのですか?」と確認しておくことが大事なのです。

税務調査は大きく分けると2種類あります。1つは、通常行われている税務調査で、事前に「調査に行きますよ」と予告されるものです。そしてもう1つが「無予告調査」と呼ばれるもので、予告なくいきなり税務署がやってきます。

無予告調査については、通常飲食店などの「現金商売」の方々に行われるのですが、実はそうとも限らないのが難しいところです。

国税庁が平成24年のに発表している資料によると、法人の1割、個人事業主の2割が無予告調査となっていますから、確率的には高いものであることがわかります。

さて、この無予告調査ですが、去年までは法的な要件はありませんでした。つまり、税務署の勝手な判断で、事前に予告するかしないかを勝手に決めていたというわけです。

しかし、今年から法改正が行われ、無予告調査は法定化されることになりました。まず法律を見ておきましょう。

国税通則法第74条の10(事前通知を要しない場合)

前条第1項の規定にかかわらず、税務署長等が調査の相手方である同条第3項第一号に掲げる納税義務者の申告若しくは過去の調査結果の内容又はその営む事業内容に関する情報その他国税庁等若しくは税関が保有する情報に鑑み、違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には、同条第1項の規定による通知を要しない。

ここにいう「前条」とは税務調査の事前通知をすることを明記した法律規定になります。つまり、法律では「違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれその他国税に関する調査の適正な遂行に支障を及ぼすおそれがあると認める場合には」、事前の予告なく税務調査を行うと規定したわけです。

これはかなり大きな改正といえます。なぜなら、今までは現金商売などではなくても、ある日突然税務署の調査官がやってきて、「今から税務調査をします」と言われるわけです。これでは税務調査に備えるなどできませんし、何よりその日は仕事になりません。
では具体的に、無予告調査をする要件というのはどのようなものなのでしょうか?
次回詳細を解説したいと思います。

前回からの続きで、無予告調査についてご説明します。

税金を定める法律である「税法」には数多くの規定がありますが、解釈による違いというものが発生します。つまり、法律とはある程度ざっくり書かれているものですから、読む人によって解釈に違いが生じることがあります。そこで税法の解釈を統一するために「通達」というものが存在します。

前置きが長くなりましたが、無予告調査を規定する法律(国税通則法第74条の10)に関する通達は下記のとおりです(すべて載せると冗長になりますので一部だけ抜粋しています)。

4-9 法第74条の10に規定する「違法又は不当な行為を容易にし、正確な課税標準等又は税額等の把握を困難にするおそれ」があると認める場合とは、例えば、次の(1)から(5)までに掲げるような場合をいう。

(1) 事前通知をすることにより、納税義務者において、法第127条第2号又は同条第3号に掲げる行為を行うことを助長することが合理的に推認される場合。

(2) 事前通知をすることにより、納税義務者において、調査の実施を困難にすることを意図し逃亡することが合理的に推認される場合。

(3) 事前通知をすることにより、納税義務者において、調査に必要な帳簿書類その他の物件を破棄し、移動し、隠匿し、改ざんし、変造し、又は偽造することが合理的に推認される場合。

(4) 事前通知をすることにより、納税義務者において、過去の違法又は不当な行為の発見を困難にする目的で、質問検査等を行う時点において適正な記帳又は書類の適正な記載と保存を行っている状態を作出することが合理的に推認される場合。

(5) 事前通知をすることにより、納税義務者において、その使用人その他の従業者若しくは取引先又はその他の第三者に対し、上記(1)から(4)までに掲げる行為を行うよう、又は調査への協力を控えるよう要請する(強要し、買収し又は共謀することを含む。)ことが合理的に推認される場合。

いかがでしょうか?

去年までの税務調査では、「なぜこの会社が無予告調査なの?」と思われる事案があったのですが、今年から上記のとおり、かなり悪いことをしている、もしくはするだろうという見込みがなければ無予告調査は行わないことになったのです。

ちなみに通達は調査官が守らなければならない規則ですから、無予告調査に入られた場合は通達に合致しているか、調査官に問いただすことができます。

法人の税務調査において、多額の否認指摘を受けるケースとして「役員報酬」(法律用語では「役員給与」)があります。

なぜ役員報酬を否認されると多額になるかというと、すでに役員報酬を支払っているにもかかわらず、その全額もしくは一部を否認されてしまうと、法人税の計算上「損金」(一般的にいう経費)に入れることができないため、そのまま法人税等が増えてしまうという事態になるからです。

役員報酬というのは、仮に年間1000万円支払えばそのまま損金になるのであれば、これほど簡単なことはないのですが、税法はそれほど簡単にはできていないというところに問題があります。

もっともシンプルなところから解説すると、役員報酬は毎月「一定金額」であることが原則です。例えば、毎月50万円支給していた役員報酬を、突然来月から100万円に増額することなどは認められていません。これは、法人の利益調整のために役員報酬の増減をさせないためとされています。

では、役員報酬を増減させるためにはどうすればいいのでしょうか。もっとも基本的なパターンとしては、決算期末日から3ヶ月以内に株主総会を開催し、そこで役員報酬の支給額を変更することです。
こう考えると原則は、あくまでも年に1回しか役員報酬を改定することができないということになります。だからこそ、法人の事業計画等を作るなどして、計画的に役員報酬を設定しなければ、税金上多額の負担が生じることがあります。

税務調査ではこのように、役員報酬が事業年度内に変更されていないのかチェックされるというわけです。また、前提となるのが株主総会ですから、議事録をきちんと残しておく必要もあります。

では、役員報酬を事業年度の途中で改定することは絶対に許されないのでしょうか。ここで税法では、「臨時改定事由」による改定というものを認めています。

役員の職制上の地位の変更、その役員の職務の内容の重大な変更その他これに類するやむを得ない事情等により、役員報酬を改定することは認めています。例えば、次の定時株主総会までの間に社長が退任し、平取締役が代表取締役に就任したとすれば、地位が大幅に変更になったのですから、当然に役員報酬を増額してもいいというわけです。

この点も注意が必要で、税務調査では登記の変更や株主総会の議事録をチェック、または職務内容をヒアリングされますので、対応方法は事前に協議しておくべきです。

前回に引き続き、役員報酬の改定について説明しましょう。前回は「役員報酬を期の途中で増減できないのは、法人の利益調整をさせないため」と解説しました。

ここで疑問に思う方も多いはずです。「確かに、法人の利益が多額にでそうだから役員報酬を増額して、法人の利益を減らそうとするのは良くない。しかし、逆ならどうなのか?つまり、法人の財務状況が危機的な場合に、期の途中で役員報酬を減額することは認められるのではないか」

確かに、法人の経営を考えると、銀行との関係上赤字にできなかったり、また債務超過などもっての外、というのが現実でしょう。

税法上、このように法人の業績が悪化した場合、期の途中で役員報酬を減額することを「業績悪化改定事由」として認めています。しかし、この規定はかなり範囲が狭く、現実的に期の途中で役員報酬を減額することは難しいと言わざるを得ません。


法人税基本通達9-2-13(経営の状況の著しい悪化に類する理由)

令第69条第1項第1号ハ《定期同額給与の範囲等》に規定する「経営の状況が著しく悪化したことその他これに類する理由」とは、経営状況が著しく悪化したことなどやむを得ず役員給与を減額せざるを得ない事情があることをいうのであるから、法人の一時的な資金繰りの都合や単に業績目標値に達しなかったことなどはこれに含まれないことに留意する。

例えば、経営状況の悪化により従業員賞与を一律カットせざるを得ないような状況の場合であれば、役員報酬の減額は認められるものと考えられます。
しかし、一時的に売上・利益が落ちたなどでは、ここにいう「業績悪化改定事由」には該当しないため、減額が認められないということなのです。

この基準が明確ではないため、国税庁は下記の資料をホームページで公開しています。

「役員給与に関するQ&A」(平成24年4月改定)

ここでは詳細な説明を省略しますが、ご興味ある方はぜひ上記のサイトをご覧ください。
このQ&Aは平成23年3月の震災を受けて改定されたものですが、「業績悪化改定事由」による役員報酬の減額は、要件が非常に厳しいことがおわかりいただけるものと思います。
法人のために役員報酬を減額したいと考えても、実行するには要件を満たす必要がありますので、ぜひ注意してください。

税務調査の手続きが改正(厳格化)されたことは、すでに告知させていただいておりますが、今回顧問税理士がいるにもかかわらず、税理士がいないところで税務調査が行われてしまうリスクについてご説明します。

まず、税務調査は通常、事前に通知があって行われるものですが、この点については「法律の改正は」行われていません。


税理法第34条(調査の通知)

税務官公署の当該職員は、租税の課税標準等を記載した申告書を提出した者について、当該申告書に係る租税に関しあらかじめその者に日時場所を通知してその帳簿書類(その作成又は保存に代えて電磁的記録の作成又は保存がされている場合における当該電磁的記録を含む。以下同じ。)を調査する場合において、当該租税に関し第30条の規定による書面を提出している税理士があるときは、あわせて当該税理士に対しその調査の日時場所を通知しなければならない。


この法律に規定されている通り、顧問税理士がいる場合は、「あわせて当該税理士に対しその調査の日時場所を通知しなければならない。」とされています。

この「あわせて」が問題になるのですが、税務署が物理的に、会社と顧問税理士の両方に「同時に」通知(連絡)することは不可能ですから、以前は顧問税理士に先に連絡が入ることが多かったのですが、現在は会社(納税者)の方に先に連絡がいくようになりました。

この点、税務署から連絡があった場合は「顧問税理士にすべて任せているので、そちらの方に連絡してください」と答えていただくのが望ましい対応です。そうすると、顧問税理士が税務調査の日程調整を行えることになり、日程についても、納税者再度の都合を最大限優先させて日程調整を行うことができます。

ここで、さらに注意点なのですが、税務調査が開始されると、通常税務署との連絡は顧問税理士が行うものです。しかし、調査官の中にはあえて税理士に連絡せず、会社に直接連絡したり、また突然会社に訪問したりするケースが散見されるのも事実です。

ここで大事なことは、税務調査の事前連絡のみならず、税務調査の期間であっても、常に「顧問税理士にすべて任せているので、そちらの方に連絡してください」、「直接連絡されてもわかりません」という、一貫した対応を続けていただきたいということです。

税務署と直接やり取りをすれば、いつの間にか大きなリスクを抱えることもあるので、ぜひ注意していただきたいと思います。

前回に引続き、顧問税理士がいるにもかかわらず、税務署から会社に直接連絡があった場合のリスクについてご説明します。

税務調査の途中で、調査官が直接会社に連絡したり、突然訪問したりする理由のほとんどは、顧問税理士がいないところで、税務署に有利な発言を引き出したり、証拠を収集したいというねらいがあります。

調査官が顧問税理士のいないところで行動を起こすということは、税務署の立場で考えてみると、顧問税理士がいない方がありがたい、ということです。つまり、顧問税理士がいた方が困るというわけです。
これを納税者の立場から見ると、顧問税理士がいる方が、有利になる、と理解できるわけです。

例えば実例として、顧問税理士がいないところで、突然調査官が訪問してきて、さまざまな事情を聞かれた挙句、「この書面にサインしてください」と言われ、言われるがままにサインしたところ、納税者にとって圧倒的に不利な書面だったというケースがあります。

このような調査官の行為が「違法か」と問われると、違法ではありません。なぜなら、顧問税理士が不在の場合でも、税務署は納税者と直接連絡・対面できるからです(あくまでも税理士は、納税者の「代理人」という理解です)。

しかし常識的に考えてみると、税務署との正しい対応方法がわからないから顧問税理士を雇っているわけで、ここで顧問税理士に不在の中、何か税務署に行為を求められたら、自分たちによって有利か不利かもわからずに、対応してしまうというのが現実でしょう。

だからこそ前回も書いたとおり、税務署からの連絡や訪問は対応すべきではなく、すべて顧問税理士に任せてしまった方がいいのです。

これは、無予告調査でも同じことがいえます。税務調査は通常、事前に通知があるのですが、事前の連絡なく、突然税務調査に入られることもあります。このような場合、顧問税理士としてはできる限りその日に対応したいのですが、他の予定等もあり、対応できないことも多くあります。

調査官は、「会社内の事情さえわかればいいので、顧問税理士がいなくても税務調査をさせてください」と執拗に食い下がってくることがあります。そこで、「まあ顧問税理士には後で報告すればいいか」と判断してしまうと、あとで取り返しのつかないことになりかねないのです。

突然調査官が来た場合は、絶対に顧問税理士に連絡するとともに、税務調査をその場で受けるか受けないかの判断は税理士に任せていただきたいと思います。これが納税者の皆さんにとって最善の方法なのです。

税務調査は、税務署の調査官に事業に関する秘密(売上や利益の金額)を明らかにすることですから、調査官に秘密を洩らされるのであれば、素直に回答できないことになります。今回と次回にわたって、国税調査官に課されている守秘義務について解説しましょう。

国税庁のホームページにおいて、「税務調査手続に関するFAQ(一般納税者向け)」

では、下記の問答が載っています。

問8
調査対象となる納税者の方について、医師、弁護士のように職業上の守秘義務が課されている場合や宗教法人のように個人の信教に関する情報を保有している場合、業務上の秘密に関する帳簿書類等の提示・提出を拒むことはできますか。

【答】
調査担当者は、調査について必要があると判断した場合には、業務上の秘密に関する帳簿書類等であっても、納税者の方の理解と協力の下、その承諾を得て、そのような帳簿書類等を提示・提出いただく場合があります。
いずれの場合においても、調査のために必要な範囲でお願いしているものであり、法令上認められた質問検査等の範囲に含まれるものです。調査担当者には調査を通じて知った秘密を漏らしてはならない義務が課されていますので、調査へのご協力をお願いします。

つまり、国税調査官に「調査を通じて知った秘密を漏らしてはならない義務=守秘義務」が課されていることを明記しています。
この守秘義務は、公務員全般に課される守秘義務に加え、国税調査官に課される守秘義務が、2重で課されているのです。下記は公務員全般に関する法律になります。


第100条(秘密を守る義務)
職員は、職務上知ることのできた秘密を漏らしてはならない。その職を退いた後といえども同様とする。

第109条(罰則)
次の各号のいずれかに該当する者は、一年以下の懲役又は五十万円以下の罰金に処する。
十二  第百条第一項若しくは第二項又は第百六条の十二第一項の規定に違反して秘密を漏らした者

前回から引続き、調査官の守秘義務を解説し、それに加えて個人情報保護法との兼ね合いをご説明します。
前回は、公務員全般に課されている守秘義務まで解説しましたが、それに「加えて」国税職員に課されている守秘義務の法律があります。

国税通則法第126条
  国税に関する調査(不服申立てに係る事件の審理のための調査及び国税の犯則事件の調査を含む。)若しくは租税条約等の実施に伴う所得税法、法人税法及び地方税法の特例等に関する法律(昭和44年法律第46号)の規定に基づいて行う情報の提供のための調査に関する事務又は国税の徴収に関する事務に従事している者又は従事していた者が、これらの事務に関して知ることのできた秘密を漏らし、又は盗用したときは、これを2年以下の懲役又は100万円以下の罰金に処する。

つまり、調査官には2重に、かつ強い罰則規定があるので、秘密をちゃんと守るのを前提に税務調査を行っているというわけです。

また会社は通常、お客様の秘密を保持することも多く、その秘密を開示することに抵抗がある経営者も多いと思います。
例えば、保険代理店などはお客様の保険の情報を扱っているわけですし、小売店はお客様の購入履歴のみならず、住所などの個人情報を扱っているわけです。
この点、税務調査において個人情報保護法との兼ね合いを心配する経営者もいますが、法律では下記のように規定しています。

個人情報保護法第16条第3項
前二項の規定は、次に掲げる場合については、適用しない。
一 法令に基づく場合

個人情報保護法第23条第1項
一 法令に基づく場合

個人情報保護法の適用除外である、この「法令に基づく場合」という規定に、税務調査が含まれているということなのです。

会社に守秘義務があるから、また個人情報を取り扱っているから、という理由では、税務調査での情報開示は断れませんので、注意してください。

税務調査でもっとも問題になりやすい項目の1つが、重加算税です。実際のところ、国税庁が公表している統計によると、法人に対する税務調査のうち、約2割に重加算税が課されているのが実態なのです。

重加算税の法的要件は簡単にいうと、「仮装」または「隠ぺい」と認定される行為をしたこと。

「仮装」とは、請求書の数字を書き換えるなど、何かをねつ造したり偽造したりすること。

また「隠ぺい」とは、本来ある請求書を隠したりすることです。


ただし、これらはあくまでも例示であって、1つの行為を「仮装または隠ぺい」に該当するのかどうかを判断・判別するのは殊のほか難しいのもまた事実です。

例えば、毎月払っている外注先に対する支払い。これがたまたま、ある月だけ帳簿に2重に計上されていたとしましょう。つまり、一部の経費が2倍になっていたわけです。

この事実を調査官が見つけた場合はこう言うでしょう。「経費の2重計上ですね。これは仮装行為になりますので重加算税ですよ!」

しかし、実際のところはどうなのでしょうか?経費を増やして税金を減らしたければ、そんなバレバレのことを本当にするものでしょうか? おそらく、真相はこうでしょう。「取引先からの請求書を誤って2回入力してしまった。そして、決算のときに気付かずにそのまま申告してしまった。」

これが真実なんだとすれば、ただのミスなわけです。ミスに重加算税という罰則が課されるのはおかしいとは思いませんか。

確かに法律上は「仮装または隠ぺいの場合は重加算税」と規定されているのですが、何が「仮装」で、何が「隠ぺい」ではないのかの線引きは、もはや言葉の定義によるわけです。

ここでわかりやすい線引きは、「わざとやったかどうか」だと覚えておいてください(あくまでもわかりやすく説明しています)。

言葉を考えてみてください。「わざとじゃない仮装」というのはあり得ませんよね。

「うっかり隠ぺい」もないわけです。「仮装」や「隠ぺい」と認定するためには、「わざとやったこと=故意」が要件となるわけです。

上記の例でいうと、調査官が重加算税だと主張してきた場合、こう反論することです。

「ちょっと待ってください。これはどう考えても、ただのミスでしょう。本当に脱税したければ、同じ日に同じ金額で同じ取引先に対して支払った入力しないですよ!」

つまり、ミスであることを主張すれば重加算税は課されないのです。

前回から引続き重加算税に関して説明しましょう。

税務調査において重要なのは「駆け引き=交渉」です。何も税務署とモメることがいいわけではありません。税務調査が長引くのは誰でも嫌ですし、モメて得することがないのもまた事実ですから。

しかし、税務調査において譲れないポイントがあるとすれば、それは重加算税です。なぜなら、重加算税には3つの大きなデメリットがあるからです。


(1) 35%の重加算税
税務調査の結果として誤りが見つかり、修正申告になったとすれば、通常10%の加算税が課されます。
これを過少申告加算税といいます。つまり、誤っていたのだから、罰則的な10%を追加的に払わなければならない、というわけです。
しかし、重加算税となると、10%ではなく「35%」の税率に上がります。つまり、重加算税だと追徴税額が25%増しになるのです。

(2) 延滞税
ここは気付いていない人が多いのですが、重加算税になると実は延滞税が一気に高くなります。
延滞税は税金の納付が遅れたという意味合いで、利子と同じ効力をもつものなのですが、実際は計算上1年分のみ課される(特例)ことになっています。
しかし、重加算税の場合はこの特例計算ができないため、延滞税が非常に高くなるのです。

(3) 以後の税務調査に影響する
支払う追徴税額は①②を合わせた分だけ多くなるのですが、さらに、重加算税を課されると、それ以降税務調査に入られやすくなります。
これは税務署が、過去に重加算税を課した会社や個人事業主をマークしているからに他なりません。
重加算税を課されたということは、過去に税金を「わざと誤魔化していた」という事実の認定なのですから、当然といえば当然の顛末かもしれません。

税務調査が早く終わるからといって、安易に重加算税を受け入れるべきではない理由がおわかりいただけたと思います。

このようなデメリットをきちんと知ったうえで、税務調査に臨む必要があります。

新聞の一面を独占していたので、ご存知の方も多いと思いますが、先日最高裁判所が、民法900条4号ただし書の規定のうち、嫡出でない子の相続分を嫡出子の相続分の2分の1とする部分は、遅くとも平成13年7月当時(被相続人の死亡時)憲法14条1項に違反していたと判断しました。

法律上の婚姻関係にない男女から生まれた子(非嫡出子)の法定相続分を、法律上の婚姻関係にある男女から生まれた子(嫡出子)の2分の1と定めることが、合理的理由のない差別的取扱いにあたるかが争点でした。

決定では、昭和22年の民法改正当時の社会状況(当時非嫡出子に相続分を認めない諸外国の立法例が存在していた状況や相続財産は嫡出の子孫に承継させたいという気風など)からの変化や、平成7年に合憲決定が出された以降の諸外国の状況(相続に関する差別を廃止する立法が、平成10年にドイツで、平成13年にはフランスでなされ、嫡出子と非嫡出子の相続分に差異を設けている国は、欧米諸国にはなく、世界的にも限られた状況にあることなど。)の変化、国連関連組織から懸念や法改正の勧告を受けていたという事情、そして、社会状況の変化に伴い、非嫡出子と嫡出子を区別する法制に変化が生じているなどの事情を詳細に検討した上で、「父母が婚姻関係になかったという、子にとっては自ら選択ないし修正する余地のない事柄を理由としてその子に不利益を及ぼすことは許さ」ないと判断したわけです。

この最高裁判決が大きく話題になる理由は、法律そのものが否定されたということです。つまり、法律というのは(あくまでも裁判を前提ですが)、時代・社会情勢等を鑑みた結果として不合理だと判断されれば、法律自体が間違っていると判断されることもあるということです。
この判決によって、今後相続税の金額等も大きく変わってくる可能性があります。

この事例はあくまでも、最高裁の決定であって、税務調査の現場では法律そのものを否定することはできません。なぜなら、日本は「租税法律主義」を採用しているからです。
租税法律主義とは、何人(なんぴと)も法律の根拠がなければ、租税を賦課されたり、徴収されたりすることがないとする考え方をいいます。
簡単にいえば、税金の計算においては、法律には従わなければならない。逆に言えば、いくら税務署に言われたからといっても、法律の根拠がなければ課税されることはないともいえるわけです。
この原則は非常に大事ですので、ぜひ覚えておいてください。

租税法律主義は憲法第30条と84条で定められています。つまり、税金は「法律に従って計算してください」というわけです。では、税務調査において法律以外は否認根拠にならないのでしょうか?
もちろん理論的にいえば、税務調査において法律以外が否認根拠になることはあり得ないはずなのですが、現実は違います。国税庁が出している「通達」が否認根拠になることの方が多いのが現実なのです。

では、調査官から「この通達に反しているので否認します」と言われた場合、どのように対応するのが正しいのでしょうか。
ここで、「通達は法律ではないので、否認根拠になりません」と主張しても通らないことは確実です。なぜなら、確かに通達は法律ではないのですが、調査官(国家公務員)は通達を守らなければならない立場だからです。
つまり、会社や一般国民は通達を守る必要はないにしても、調査官が通達を守らなければならない以上、間接的に通達に拘束されているのです。

そこで、「通達は法律ではないから守らない」と主張するのではなく、違う角度から反論する必要があるのです。法人税基本通達の前文(一部抜粋)にはこう書かれています。

「この通達の具体的な運用に当たっては、法令の規定の趣旨、制度の背景のみならず条理、社会通念をも勘案しつつ、個々の具体的事案に妥当する処理を図るように努められたい。いやしくも、通達の規定中の部分的字句について形式的解釈に固執し、全体の趣旨から逸脱した運用を行ったり、通達中に例示がないとか通達に規定されていないとかの理由だけで法令の規定の趣旨や社会通念等に即しない解釈におちいったりすることのないように留意されたい。」

つまり、前回取り上げた最高裁決ではありませんが、通達というのは、画一的に運用・適用してはならないと定められており、さらに「社会通念=常識」が上回ると規定されているのです。

一度決められたルールはなかなか変わりません。かなり昔に規定された通達も多くあります。しかし、現実は常に変わり続けています。
税務調査が行われた今この瞬間の常識が、通達より優先されると書かれているわけですから、この「前文」はぜひ知っておいてください。

税務調査で税金の計算に誤りが発見された場合、「法的には」2つの終わり方が存在します。1つは「修正申告」で、もう1つは「更正」というものです。

この2つには違いがあるのですが、現実的には税務調査のほとんどが、修正申告で終わります(あくまでも誤りがあった場合です)。

では、なぜ修正申告で終わるのでしょうか?そもそも、修正申告と更正の違いは何なのでしょうか?

まず、修正申告と更正の違いを確認しておきましょう。

【修正申告】
税務調査の中で、調査官の指摘に納得し、自ら誤りを認めて提出するもの

【更正】
税務調査の中で、調査官に否認指摘されたが、納得できないので修正申告を提出しなかったところ、税務署側から処分されるもの

ここで大事な点は、修正申告は「自ら提出するもの」であり、一方、更正は「税務署からの処分」ということです。

「処分」と聞くと、何か悪いことをやったかのように感じますが、実際には更正されたからといって、以後税務署から不利益な取り扱いを受けるわけではありません。あくまでも、見解の相違があり、それが最後まで埋まらなかったというだけです。

また、修正申告と更正では、支払うべき追徴税額も同じです。調査官の否認指摘が全部で100万円だとすると、修正申告でも更正でも、同じ100万円を支払うことになりますし、加算税や延滞税の金額も同じになります。
ということは、税務調査を受ける側からすると、修正申告と更正では、どちらが不利ということはないのです。ただ、1点だけ違いがあります。それは、不服申立てをできるかどうかです。不服申立てとは、税務署からの処分に納得できない場合、裁判の前段階で税務署もしくは国税不服審判所に訴えを起こすことをいいます。

修正申告は、自ら納得して提出するものであるため、救済措置である不服申立てはできませんが、更正の場合は、税務署からの処分であるため、処分内容に納得できない場合、不服申立てすることができるのです。

このように、修正申告と更正を比べてみると、税務調査を受ける側から考えると、どちらが不利ということはなく、むしろ不服申立てできる権利を得ることができるという意味では、更正の方が有利なのです(もちろん、更正されても不服申立てしないという選択もできます)。

実は逆の立場から考えると、税務調査で誤りがあった場合に、修正申告を出してほしいのは調査官(税務署)の方なのです。

調査官が修正申告を提出してほしいと考える3つの理由を挙げます。

①不服申立てが前提となっている
更正(処分)をすると、かなり高い割合で納税者から異議申立てが行われます。異議申立てとは、更正処分をした(つまり税務調査をした)税務署に出されるもので、税務調査を担当した調査官とは違う調査官が実質審理(再調査)を行わなければなりません。つまり、税務署からすると税務調査の二度手間ということで、事務量が増えるのが実態なのです。

②附記すべき理由が曖昧
税務調査において調査官が否認指摘をしたものの、その根拠が非常に曖昧であることが多くあります。税務調査の結末が修正申告の提出ということであれば、その根拠がいくら曖昧でも、「納税者が納得して提出するもの」である以上、問題にはなりません。しかし、更正となると、否認根拠を法令等で明確にしなければなりません。実は税務署側からすると、附記すべき理由を挙げるが最も難しいことなのです。

③税務署内の手続きが面倒
納税者が修正申告を提出すれば、基本的に調査官が上司(統括官)の決裁を得るだけで税務署内の手続きは終了します。しかしこれが更正ということになると、これほど簡単な手続きではありません。更正をする場合、金額にかかわらず税務署長の決裁が必要になります。調査官は、統括官・副署長・署長と3人の決裁を必要とし、税務署内の手続きが非常に面倒であるため、調査官がやりたがらないのが実情なのです。

このように、税務調査で誤りがあった場合、そのほとんどが修正申告で終わるのは調査官側の要請なのです。
もちろん、税務調査の中で調査官の否認指摘に納得したのであれば、修正申告を提出する方が望ましいことは事実です。その方が税務調査は早く終わるのですから。しかし、納得もせずに修正申告を提出することは危険だということがおわかりいただけたかと思います。ぜひ、この違いを理解して税務調査に臨んでいただきたいと思います。

 法人に対する税務調査は、「法人税・消費税・源泉所得税」という3つの税金が同時に調査されるのが通常です。しかし、契約書等が多数存在する業種・業態においては、同時に印紙税の調査もされることが多くあります。
しかし、印紙税の税務調査は他の税金の調査と異なっている点があることは、経営者のみならず、我々税理士として注意しなければならないポイントです。

まず前提となる、税理士を規定している法律を確認してみましょう。

税理士法第2条(税理士の業務)
税理士は、他人の求めに応じ、租税(印紙税、登録免許税、関税、法定外普通税(地方税法(昭和25年法律第226号)第13条の3第4項に規定する道府県法定外普通税及び市町村法定外普通税をいう。)、法定外目的税(同項に規定する法定外目的税をいう。)その他の政令で定めるものを除く。以下同じ。)に関し、次に掲げる事務を行うことを業とする。

カッコ書きが多くて、ややこしい文章ですが、簡単に説明すると、税理士は印紙税の業務を行うことができません(印紙税を除くと規定されています)。
なぜ税金の専門家である税理士の業務において、印紙税が範囲から外されているのか謎なのですが、法律にそう規定されている以上、仕方のない部分です。

さて、この事実を踏まえて、では税務調査の事前通知はどのようにして行われるのでしょうか。
税務署内の規定によると、このようなルールがあります。

「法人課税部門における実地の調査においては、原則として、法人税、消費税及び源泉所得税を事前通知の調査対象税目とする。(中略)なお、原則として、印紙税は事前通知の際の調査対象税目には含めないが、調査着手後、法人税等の調査の過程において印紙税の不納付文書(納付方法が印紙貼付によるものに限る。)を把握した場合には、事前通知事項以外の事項として調査対象に追加することを納税義務者等に説明した上で調査することに留意する。」

というわけで、事前には通知しないが、必要であれば印紙税の調査も行うとしているのです。

さらに問題があります。税理士の業務から、印紙税が除かれているという事実から、税務調査で印紙税の話になると、税理士は口出しできないということです。
税理士が税務調査に立ち会うのは「税務代理」といって、顧問先である法人・個人事業主の代わりに、税務調査で調査官に発言等をする行為なのですが、印紙税に限っては、これができないというわけです。

実務上のところ、多くの税務調査で印紙税においても同じように、調査官から税理士に意見を求められたり、また誤り等がある場合に税理士事務所が処理をしたりするのですが、これらには、大きく2つの理由があるものと考えられます。

①調査官がこれら税理士法の事実を知らない

②事実は知っているがあえて立会い等を認めている
(法人や個人事業主など納税者と直接やり取りするより楽だから)

実のところ、①がほとんどではないかと思います。税務署がどれだけのルールを作っても、多くの調査官に周知されていないというのは、印紙税だけの問題ではありません。ましてや、同じ税務調査で問題になる税金なのですから、これらの事実を調査官が知らなくても仕方のないことかもしれません。
また、②の場合も多いと考えています。実際のところ、税金の知識がないからこそ税理士に依頼しているのが事実なのであって、印紙税だけ税理士ではなく、経営者に質問するというのも、調査官からすれば面倒なはずです。

さて、税理士が印紙税の税務代理ができないという事実を知っている調査官の中には、税務調査で税理士が印紙税の口出しをすると、「法律違反ですよ」と言ってくるケースも考えられます。
このような場合は、(1)税理士が会社と雇用契約を交わし、経緯担当者として税務署に説明する。(2)側面からアドバイスしたうえで会社側が対応する。といった対策が考えられます。

税務調査では、調査官が巧みに言葉を使い、経営者の発言を誘い、その揚げ足を取られて、結果として課税されてしまうことがよくあります。税務調査では、あまり余計なことを話さないことがいいのは、間違いないでしょう。

さて今回は、経営者が調査官に言ってはならない言葉を集めてみました。

①「前の税務調査で言われませんでしたよ!」

以前の税務調査で否認指摘されなかったからといって、それは認められたというわけではありません。調査官も人間ですし、また税務調査は日数が限られているため、すべてチェックすることができないというのが、本当のところです。
経営者として、この言葉を言いたい心情はわかりますが、こう言ったがために、遡られる必要のない過去まで、修正申告の提出を求められる可能性があります。

②「経理と税理士に全部任せているから知らない」

実際のところ、経営者としてすべての経理処理がわかるわけではないことは現実でしょうし、この点調査官もよくわかっています。
しかし、調査官は経営者の態度・姿勢まで見ています。つまり、「この経営者は、会社の数字を他人任せにしていないな」と調査官が思えば、それほど深く追及してこない点も、このような発言を平気でする会社は、「経営者が内容をわかっていないのだから、叩けばホコリが出る」と思われてしまうのです。


③「趣味はゴルフと飲むこと」

税務調査でよく見られるポイントとして、経営者の個人的な支出を、経費にしていないかどうかが挙げられます。
当然、顧客や取引先と行った接待(ゴルフや飲み会)などは経費になるべきものなのですが、この境界性が曖昧であることが多くあります。
この点、このような発言をすると、「社長、接待費の中に、個人的なゴルフ代や飲み代が入っているのではないですか!?」と疑われる端緒(キッカケ)になるのです。


④「うちの取引先なんてもっと儲かってるのに全然税務調査に入れてないぞ!もっと儲かってる会社に税務調査に行けよ!!」

こう言いたくなる気持ちはよくわかります。税務調査というのは、実際に行われている会社にバラツキがあり、税務調査によく入られる会社も、そうでない会社もあります。
しかし、このような発言をしていますと、調査官にこう言われかねないのです。「では、その「もっと儲かっている取引先をぜひ教えてください。教えていただければ、ぜひ税務調査に行かせてもらいますよ。」
こう言われてしまうと、黙ってしまうしかないでしょう。まさか取引先を巻き込むわけにはいかないでしょうから。
税務調査というのは、1つの会社に入れば、その影響で取引先などに連鎖することがよくあります。経営者自ら、このような発言をしてしまえば、その連鎖を大きくしてしまう可能性もあるということです。


⑤「節税は納税者の権利だ」

この言葉は客観的に考えて、非常に正しいのは間違いありません。

節税というのは、「合法的に税金を減らす行為」であって、合法である以上、税務署にとやかく言われたくないのは当然です。しかし、この「節税」なる言葉の定義は実のところ、微妙なこともあるのです。

例えば、決算期末に大きな売上が計上されることがわかったとします。ここで経営者としては、予想外の法人税などが発生することがわかり、「節税」になる方法を考えるわけです。この売上が数千万円にもなれば、そんなに簡単に節税などできるわけがありません。そこで、無理やり役員を退職させたことにして、退職金を支払うことにすれば、これは「節税」と呼べるのでしょうか?

「節税」と「租税回避行為」の境目は非常に曖昧で、その判断は難しい問題です。しかし、税務署に「租税回避行為」と言われてしまえば、いくら「節税」だと声高に叫んだところで、否認されてしまうリスクが内在しているわけです。
実際に「節税は納税者の権利」だから問題ないと思っても、調査官にわざわざ言う必要のない言葉なのです。

税務調査の結果として、誤りがまったくなければ「申告是認」。誤りがあれば、2つの終わり方があり、「修正申告」を提出するか、「更正」という税務署からの処分になるのかを選択することができます。

誤りがあった場合、税務調査のほとんどは修正申告になるのですが、これはあくまでも税務署(調査官)からの指摘に納得できる場合です。否認指摘の内容にどうしても納得できなければ、「更正」を選択せざるを得ません。

なぜなら、修正申告を提出すると、「不服申立て」ができないからです。つまり、納得できなくても、修正申告を提出してしまうと、その後、争うことができません。逆にいえば、更正の場合は、納得できないのであれば不服申立てという手続きを行うことで、国(税務署)と争うことができるのです。

ここで勘違いしやすいのは、修正申告を提出しても、加算税や延滞税は処分ですから、加算税や延滞税の減額や取消しについては、不服申立てで争うことができるということです。例えば、否認指摘には納得したのだけど、重加算税には納得できない場合は、重加算税だけの取消しを争うことができます。

さて、税務調査の内容に納得できず、万が一不服申立てをした場合、どのようになるのでしょうか。

手続きの流れなどを解説する前に、不服申立ての特徴を挙げておきましょう。

まず、不服申立てとは、あくまでも納税者の救済制度です。つまり、税務署から恣意的な課税を受けた場合のように、納税者を救うことが目的となっていますので、不服申立てをしたからといって、税務調査以上の不利益をうけることはありません。例えば、税務調査で100万円を課税され、不服申立てをしたら違う誤りが発見されて、120万円課税されるなどの追加的リスクはありません。

また、不服申立てはあくまでも訴訟ではなく、行政手続きです。訴訟とは違い、手数料などは一切かかりません。

さらに訴訟と違う点は、訴訟は通常、代理人となる弁護士に依頼することになりますが、不服申立ては弁護士に依頼する必要はありません(もちろん依頼しても構いません)。税務調査の延長で、税理士が代理人になることができるのです(税理士は訴訟において代理人になることはできません)。

不服申立ての手続きは具体的に、異議申立てと審査請求に分けることができます。処分から2ヶ月以内に税務署に対して申立てを行うのが「異議申立て」、国税不服審判所に対して申立てを行うのが「審査請求」となります。

異議申立ては、同じ税務署によって(実質)審理が行われます。これは通常、担当調査官を変えて再調査を行うものです。異議申立てにおける審理は、決定までに1ヶ月と非常に短く、また最終決裁者である税務署長が同じため、納税者側が勝つ確率は極めて低いといえます。異議申立ての決定内容に不服がある場合、納税者は審査請求を行うことができます。

また、青色申告者に対する処分であれば、異議申立ての手続きをせず、直接審査請求を行うことが可能です。国税不服審判所の審判員は国税職員が多いのですが、最近では外部からの登用も進めていることもあり、課税庁側寄りの裁決を下すことは少なくなっているようです。審査請求の結果(裁決)、それでも不服がある場合、裁判所に対する申立てを行うことになります。これ以降の手続きは、裁判(訴訟)になります。

毎年秋になると、国税庁から税務調査に関する情報が公開されます。報道されている内容を見てみましょう。

「法人の税務調査件数27%減 国税庁」 (2013/10/31 20:36)
今年6月までの1年間(2012事務年度)の全国の法人に対する税務調査件数が9万3千件で、前年度から27.4%減ったことが31日、国税庁のまとめで分かった。調査の手続きを定めた国税通則法が1月に改正され、1件当たりの調査期間が平均2.6日延びたため。統計がある1967年度以降で2番目の低水準となった。
申告漏れを指摘したのは6万8千社で、指摘額は総額9992億円(15.0%減)。追徴税額は2098億円(3.6%減)だった。
このうち仮装・隠蔽を伴う悪質な所得隠しの指摘は1万7千社で、認定額は2758億円(9.6%減)。「調査件数は減るため、大口、悪質な不正が想定される法人を重点的に調査した」(同庁)といい、1件当たりの所得隠しの認定額は1612万円(33%増)と過去最高だった。
法人消費税の申告漏れは5万社で、追徴税額は474億円。不正還付は542社で、追徴税額は約13億円だった。

また、個人事業主に対する税務調査の件数も3割減となっており、去年から今年前半にかけての税務調査の件数が激減していることがわかります。

これは、記事にもあるように、税務調査の手続きが今年1月から大幅に改正されたことにより、税務署内の事務量が増えたことに起因しています。こう考えると、今後もさらに税務調査の件数を減ることが予想できます。

税務調査の件数が減ることにより、国税側としては今後、

・不正が見込まれそうな納税者に的を絞る

・過去に申告是認(調査で誤りがなかった)の納税者に対する税務調査頻度を下げる

・税務調査1件あたりの日数を減らす

という方向に動くことは間違いありません。これは納税者側から考えると、良い方向転換でしょう。真面目にやっていれば、今後税務調査に入られる可能性が減ると思われます。

 前回は、税務調査の件数が激減していることをお伝えしました。これは、税務調査の手続きが今年1月から大幅に改正されたことが原因なのですが、ではその改正内容とはどのようなものでしょうか。税務調査の件数が大幅に減少するくらいの改正ですから、ぜひ知っておいてください。
平成25年11月25日の日経新聞に、この改正内容がまとまっていましたので、一部引用しながら解説します。なお、改正内容は多岐にわたりますが、もっとも変わった部分のみ取り上げます。

「今年春、税理士の永田理絵氏は、税務調査を受けた顧問先企業が受け取った更正通知書を見て驚いた。課税額を増やす理由や税額計算の過程が「5枚にわたり詳しく書かれていた」(永田氏)ためだ。
「従来は(行政上の紛争である)争訟にならないと当局はここまで詳しく開示しなかった」。国税不服審判所の民間登用審判官の経験もある永田氏はこう話す。
これまでの通知書は、なぜその法令に当てはめて増額するのか税額計算について「説明が不十分なものが目立った」(租税訴訟学会理事で税理士の藤曲武美氏)。詳しい理由を知ろうと「異議申し立てをする場合もあった」(複数の税理士)という。」

このように、税務調査で更正処分となった場合は、「理由の附記」と呼ばれる項目が強化されており、納税者に有利な改正がなされています。

「当局は従来、修正申告を促すケースが圧倒的に多かった。もちろん争訟も視野に入れて調査していたが、実際は「立証が大変」(元特別国税調査官で税理士の岡田俊明氏)。修正申告は納税者の自発的行為なので、修正すれば納税者はその件を直接争訟できなくなり、当局にとっても都合がよかった。納税者側も「当局と争うのは避けたいと考える人が多かった」(藤曲氏)。
だが法改正後は、「当局が修正申告を求めることに慎重になってきた」(ある税理士法人)面があるという。税務調査の終わりに修正申告を求める場合、最終的に増額更正を通知するときと原則同じ税額、理由を示して説明する必要が出てきたからだ。争訟まで想定した説明の必要は「修正申告を求める段階まで拡大」(志賀氏)している。」

税務調査では、税務署が圧倒的に有利で、納税者が不利と言われ続けてきましたが、この点改正により、かなり納税者側にも有利な部分が出てきたというわけです。
調査官もこの改正により、強硬的な態度を軟化させるケースも増えるものと思います。

以前、「役員報酬の改定」と題して、役員報酬は同じ決算期内で増減できないことをお伝えしました。このことについて、少し復習してみましょう。

役員報酬は毎月「一定金額」であることが原則です。例えば、毎月50万円支給していた役員報酬を、突然来月から100万円に増額することなどは認められていません。これは、法人の利益調整のために役員報酬の増減をさせないためとされています。

こう考えると、銀行との対面上の問題などで、役員報酬を下げて、法人の利益を増やす分には問題ないのかと考えそうなものですが、役員報酬を下げるのも「業績悪化改定事由」といって、かなりの理由・要件が必要とされています。要件については、国税庁のホームページに載っています。

「役員給与に関するQ&A」(平成24年4月改定)
https://www.nta.go.jp/shiraberu/zeiho-kaishaku/joho-zeikaishaku/hojin/qa.pdf


では、役員報酬を増減させるためにはどうすればいいのでしょうか。もっとも基本的なパターンとしては、決算期末日から3ヶ月以内に株主総会を開催し、そこで役員報酬の支給額を変更することです。つまり、期が変われば当然に役員報酬を変更することができるというわけです。

では、業績が極端に悪くなったわけではない。決算期が到来するまでにまだ数ヶ月ある。しかし、何とかして役員報酬を増減させたい場合はどうすればいいのでしょうか。
実はたった1つだけ、簡単に役員報酬を増減させるのと同じ効果のある方法があります。それは、「決算期の変更」です。

たとえば、3月決算法人で5月に役員報酬を決めたとしましょう。しかし、年末にかけて思ったより利益が計上されており、役員報酬をもっと上げたいと考えたとすると、通常であれば、期中の役員報酬変更はできませんが、何らかの理由で決算期を変更することになった場合、すなわち、3月決算を12月決算に変更したら、結果として、年明けから役員報酬を変更することになります。

決算期(月)の変更は登記も不要で、定款だけ変更して税務署に届け出をすればいいので、手続きも簡単にできます。また、決算期を変更しても、税務調査に入られやすくなるという事実はありません。

ただし、1期分だけ1年より期間が短くなってしまいますので、決算を締める作業等は手間になりますので、その点はご注意ください。

前回は役員報酬を改定することについて書きました。役員報酬を増減させるうえで、注意しておかなければ、退職金を見据えた役員報酬額の設定になっているかどうかです。特に、役員報酬を下げる場合に注意が必要になります。

なぜ退職金と役員報酬に関連性があるかといえば、退職金は一般的にこのような算式で計算されることになっています。

役員退職金=最終月額報酬×在任期間×功績倍率

在任期間というのは、役員に就任してからの年数。また功績倍率とは、一般的に社長代表取締役で3倍程度といわれています。 在任期間と功績倍率が固定だとすると、退職金は実際のところ、最終月額報酬で決まるともいえるわけです。

実際の例でこういうことがあります。過去法人の業績が良かった頃は、社長も役員報酬を多くとっていた。しかし、最近業績が悪化し、銀行借入の必要性からも社長の役員報酬を極端に低くし、法人に利益がでるようにしていた。しかし、社長の体調が悪化し、退任しなければならない状況になってしまった。

ここで、最終月額報酬が10万円など、かなり低い金額になっていると、30年に働いていても、

10万円×30年×3倍=退職金900万円

ということになってしまいます。

もっと退職金を支給したいという要望があっても、実際のところ、税務調査で否認されるリスクを考えると、これ以上大幅に増額して退職金を支給することは難しいこともまた事実です。
日本の税制では、退職金に課される税金は安くなるため、退職金を多く支給することが節税メリットにもつながり、役員退任後の生活の糧にもなります。
こう考えると、法人のことを考えて役員報酬を低めに設定してしまったことが、退職金を多く支給にできないという不測の事態を招く結果にもなり得るわけです。
あまり考えたくないことでしょうが、現実には死亡というリスクも考えなければなりません。役員報酬を下げた瞬間に発生するリスクというのもあるのです。役員報酬についてあまり増減させず、現時点での適正額を慎重に考える必要があるのです。 

税務調査を実施しているのは、多くの場合、管轄する税務署になります。管轄する税務署は、法人の場合、会社の本店所在地(登記場所)で決まっています。
したがって、申告書を提出した後に会社を移転し、その後税務調査ということになれば、移転後の新しく管轄になった税務署が税務調査を行うことになります。極端な例ではありますが、税務調査の最中に会社を移転した場合は、途中から移転後の税務署が税務調査を行うことになるわけです。

一方、会社の規模によって、税務調査を行う管轄が変わることもあります。
税務署ごとの基準によって変わりますが、売上金額が大きいなど、ある一定の基準を超えると、税務署の中でも「特官(とっかん)部門」が税務調査の担当になります。特官部門は、大規模法人ばかりを調査しており、複数人での税務調査となるのが通例です。ただし、特官部門が担当になったからといって、いきなり税務調査が厳しくなるということはありません。

もう1つの基準として、税務署ではなく「国税局」が税務調査の担当になることもあります。これは、原則として資本金が1億円以上の場合です。
資本金が1億円未満の会社が、増資により1億円以上になった場合は、税務調査の担当が税務署ではなく、管轄する国税局になるわけです。

これはあくまでも原則であって、資本金が大きいにもかかわらず、会社の規模がそれほど大きくない場合は、国税局に管轄が移らず、そのまま税務署の管轄になる場合もあります。これは、税務署ごとの判断によって変わるというのが実情です。資本金が1億円以上になったにもかかわらず、税務署の管轄になる場合は、「税務署所管法人の指定通知書」という文書による通知が届くことになっています。


国税局の管轄に移った場合、税務調査ではいくつかのデメリットが考えられます。

・税務署の調査より長引くことが通例

・税務署より更正(処分)を安易に行ってくる

増資する場合は、このように税務調査の管轄にも影響を及ぼす可能性があるので、ここまで配慮して増資金額を決定したいものです。

税務調査は秋が最盛期で、年明けから確定申告時期は調査件数が少なく、また春になると急激に増えるというサイクルを毎年繰り返しています。

では、税務調査の時期はどのようにして決まっているのでしょうか。原則として、税務署は下記の基準で、法人の税務調査の時期を決めています。

秋(7~12月):2~5月決算法人

春(1~6月) :6~1月決算法人

つまり、会社の決算月によって税務調査の時期が違うということです。
日本は3月決算法人が圧倒的に多く、すべての法人のうち約2割がこの月なのです。また、この影響で3月前後の決算月の法人も多いため、税務調査の最盛期は2~5月決算法人となっているようです。

一方、税務調査の受けやすさという観点から考えると、春に行われる税務調査の方が楽であることは間違いありません。

秋の税務調査は、そもそも実施される調査件数が多く、また調査の期間も長くなる傾向があります。逆に、春の税務調査は、実質的に確定申告明けの4月から行われることがほとんどなので、調査の件数も少なく、調査の期間も短くて済む傾向があるのです。

経営者としては会社の決算月を意識することは、あまりないように思います。法人を設立した当初、設立の前月末を決算日にする法人が多いですが、本来決算月(日)というのは自ら選択できるものです。例えば、4月に法人を設立すると、ほとんどの法人は3月決算に設定しますが、なにも3月決算である必要性はなく、12月決算にしても問題ありません。

また、一度設定した決算月は、容易に変更することが可能です。税務調査の時期という観点から、決算月の変更を考え直してみてもいいでしょう。ただし、決算月を変更すると、変更した事業年度は短くなるため、決算を締める手間は増えます(変更した時の1回だけですが)。

上記の税務調査の時期というのは、あくまでも原則であって、例外も存在します。例えば、12月決算であれば本来、春に税務調査が行われるのですが、秋に税務調査が実施されるような場合です。

このようなケースは、原則から外れているのですから注意が必要です。というのも、税務署側としては、原則を逸脱するのですから、何か証拠・根拠があって、税務調査の時期をズラしているわけです。時期がズレている場合で、税務調査の事前通知があった場合は、調査の初日までにしっかり申告内容を見直した方がよいでしょう。

AIC税理士法人 アクセス

大阪事務所

大阪事務所

  〒530-0002
大阪市北区曾根崎新地2丁目3番3号
桜橋西ビル9階
  050-7101-1931

 大阪メトロ 四つ橋線 西梅田駅 9(C-57)出口より徒歩1分
 JR学研都市線 北新地駅 9(C-57)出口より徒歩1分
 JR大阪駅 桜橋口より南に 徒歩8分




東京事務所

東京事務所

  〒107-0062
東京都港区南青山2丁目4-15
天翔南青山ビル 413号
  050-7101-1932

 青山一丁目駅 5番出口から徒歩2分

AICグループ

AIC税理士法人
AIC株式会社
AIC社労士事務所
AIC行政書士事務所